トップの写真は,入院している患児の家族が協力してつくった遊具の例です。こどもたちにとっては,お父さん,お母さんが造ってくれた遊具!は本当に嬉しいでしょう。こうした活動は保護者同士の関係づくりにもつながりますし,特に普段の付添が難しいご家族にとっては,こどもの療養の支援に主体的に係わる機会としても大事な役割を担っているようです。また,遊具づくりに直接参加していないご家族やこどもたちにとっても,「入院生活の先輩」たちが残していった,というお話は,医療スタッフとご家族とが一緒に療養のための環境をつくっていくのだという目に見えるメッセージとして大切な役割を果たしています。
また,病棟内での入院児たちの「親の会」を設けている例や,その会に対してアンケートを実施し,患児家族が抱えている問題を把握することや,それらの問題を解決することを検討している例もあります。入院中のこどもと付添家族が問題と感じていることとしては例えば,付き添い・面会・設備・食事について意見が出ているそうです。
【参考文献】前川喜平:『小児がん患者への精神的ケア』,日本小児医事出版社,p179
保育者のいる時間帯には付添家族が少しだけ自分の時間ができる時間帯,と位置づけている場合があります。家族にとっては大切な息抜きや,用事を済ませる時間帯となっているでしょう。
一方,保育者やCLSがこどもと一緒に遊んだり,環境をつくったりすることは,こどもを取り巻く環境としての人間関係づくりにつながります([73.スタッフとこどもや家族との関係をつくる仕掛け])。また,家族にとってはこどもとの関わり方や,環境づくりの方法を保育者や他の家族から教わる機会,また療養環境づくりに参加することで,愛着や主体性をもてたり,貢献による満足感を得る機会にもなるでしょう。もちろんご家族の状況によってはあまり保育や環境づくりへの参加を望まない場合もあるでしょうが,共同作業や活動への参加による時間や価値観の共有,あるいは経験や思い出はまた,何にも替えがたいものともなり得ます。
心 | |
情緒の安定 | |
1.アプローチの期待感 | |
2.気持ちの切り替え空間 | |
3.気分転換ができる | |
4.小さな居場所 | |
5.生活やくつろぎの雰囲気 | |
6.治療・検査時の心的負担の軽減 | |
豊かな感性 | |
7.「触」覚のある環境 | |
8.遊びのなかの触覚 | |
9.全身で感じる遊び | |
10.においの体験 | |
11.風と気づき | |
12.光の体験 | |
13.日常的に美に触れる | |
豊かな心情 | |
14.「演じ」て理解する | |
15.表現する−音楽 | |
16.表現する−絵画,造形 | |
自然と生命への 畏敬と愛情 |
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20.自然に親しむ | |
21.季節を感じ,楽しむ | |
22.命を感じ,親しむ | |
知 | |
創造性の芽生え | |
14.「演じ」て理解する | |
15.表現する−音楽 | |
16.表現する−絵画,造形 | |
17.物語が編み込まれた環境 | |
18.遊び込める仕掛け | |
19.見立てを誘う環境 | |
豊かな言葉 | |
36.文字や数字がある環境 | |
37.知識や物語の泉に触れる | |
38.読み聞かせの演出 | |
39.ショウ&テルの機会 | |
思考力 | |
31.伝統文化を遊ぶ | |
32.自国の文化を知り,親しむ | |
33.多様性を体感する | |
34.電子メディアとの適切な距離感 | |
35.「不思議」,科学の目の芽生え | |
自主性・主体性・意欲 | |
51.「基地」空間 | |
52.アフォーダンスの演出 | |
53.遊びの可視化 | |
54.遊びの保存 | |
55.片付けのための工夫 | |
56.遊びの場の保障 | |
57.集中して遊べる空間 | |
58.プレパレーション | |
自立と自律 | |
23.時間の可視化 | |
24.日課の可視化 | |
25.音で場面や行為を知る | |
26.流れをデザインする | |
27.「自分で」を支える | |
28.着脱の自立への配慮 | |
29.排泄の自立への配慮 | |
30.身近な手洗い場 | |
関わる | |
喜んで話したり 聞いたりする態度 |
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39.ショウ&テルの機会 | |
40.仲間の共有 | |
41.保育単位の連携と柔軟性 | |
42.交流の拡がりを誘う空間 | |
43.育ち合いの仕組み | |
人に対する愛情と信頼感 | |
43.育ち合いの仕組み | |
47.命の祝福 | |
48.自己の成長の確認 | |
49.生活の振り返りの機会 | |
50.作品の展示 | |
他者を大切にする心 協調性 |
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