こども病院の外構からエントランスまでの空間や小児病棟の入口など,「外」から「中」に入るまでのつなぎの空間をアプローチ空間と呼びます。こどもと付添家族は,アプローチ空間を通って病院や病棟に入ってきます。このアプローチ空間は,環境が大きく変わることの衝撃をやわらげるクッションの役割を果たすとともに,「中」の環境への期待感をくすぐる仕掛けともなり得ます。ここで,そっけないとか,威圧的なアプローチ空間では,こどもたちの不安感や恐怖心が増してしまうことがままあります。逆に魅力的なアプローチ空間は,こどもたちの気持ちを家から病棟へとゆっくり切り替えるお手伝いをすることができます。
魅力的なアプローチ空間の要素としては,光が差し込む開口部や大きな空間(中庭や吹き抜けなど),明るい色調の内装,壁や天井,窓,柱などへの装飾や絵画の展示,オブジェなどが挙げられます。装飾や絵画,オブジェなどの要素は,こどもと保護者や保育者との会話のきっかけにもなります。印象的なオブジェなどは,その環境を象徴する「顔」の役割も果たし,こどもと環境をつなぐ心理的なアンカーにもなります。

 園の入口(門)や,園舎への入口(玄関)にいたるアプローチ空間は,こどもと保護者が行き帰りに通ります。アプローチ空間が魅力的だと,こどもたちがわくわくと楽しい気持ちで登園できます。このような魅力的なアプローチ空間は,こどもたちの気持ちが「おうちでの自分」から「園での自分」に切り替わることを助けてくれます。逆に,降園の際には園からおうちへと気持ちをゆっくり切り替えることができ,明日の園での暮らしへの期待をもちながら,帰宅の途につけます。
 魅力的なアプローチ空間の要素としては,変化のある景色や植栽,水辺(池や小川,ビオトープ),畑,などがあげられます。こうした要素はこどもと保護者の会話のきっかけにもなります。こうした契機は,保護者とこどもが園での生活の一部を共有できる大切な機会となります。
 園庭の環境づくりに心を砕いている園は多いのですが,アプローチ空間もこどもたちの心をつくる大切な空間です。

(富山大学附属病院)

 この写真の病棟では,病棟の入口を含めて病棟全体の壁や床に動物(の足跡)や植物などの装飾がされており,その様子が病棟へのアプローチ空間からよく見えます。入口左手すぐの場所に,プレイルームも見えます。こどもたちはこの雰囲気によって,安心感や期待感をもって病棟に入れます。またこうした装飾は,こどもと保護者の会話のきっかけになっています。
病棟の入口が見渡せる位置にあるスタッフステーションは,プレイルームや病棟入り口に向かって大きな開口がとられていて,こどもや付添家族が病棟スタッフに気軽に声をかけやすい雰囲気を演出しています。

情緒の安定
1.アプローチの期待感
2.気持ちの切り替え空間
3.気分転換ができる
4.小さな居場所
5.生活やくつろぎの雰囲気
6.治療・検査時の心的負担の軽減
豊かな感性
7.「触」覚のある環境
8.遊びのなかの触覚
9.全身で感じる遊び
10.においの体験
11.風と気づき
12.光の体験
13.日常的に美に触れる
豊かな心情
14.「演じ」て理解する
15.表現する−音楽
16.表現する−絵画,造形
自然と生命への
畏敬と愛情
 
20.自然に親しむ
21.季節を感じ,楽しむ
22.命を感じ,親しむ
創造性の芽生え
14.「演じ」て理解する
15.表現する−音楽
16.表現する−絵画,造形
17.物語が編み込まれた環境
18.遊び込める仕掛け
19.見立てを誘う環境
豊かな言葉
36.文字や数字がある環境
37.知識や物語の泉に触れる
38.読み聞かせの演出
39.ショウ&テルの機会
思考力
31.伝統文化を遊ぶ
32.自国の文化を知り,親しむ
33.多様性を体感する
34.電子メディアとの適切な距離感
35.「不思議」,科学の目の芽生え
自主性・主体性・意欲
51.「基地」空間
52.アフォーダンスの演出
53.遊びの可視化
54.遊びの保存
55.片付けのための工夫
56.遊びの場の保障
57.集中して遊べる空間
58.プレパレーション
自立と自律
23.時間の可視化
24.日課の可視化
25.音で場面や行為を知る
26.流れをデザインする
27.「自分で」を支える
28.着脱の自立への配慮
29.排泄の自立への配慮
30.身近な手洗い場
 
関わる
喜んで話したり
聞いたりする態度
 
39.ショウ&テルの機会
40.仲間の共有
41.保育単位の連携と柔軟性
42.交流の拡がりを誘う空間
43.育ち合いの仕組み
人に対する愛情と信頼感
43.育ち合いの仕組み
47.命の祝福
48.自己の成長の確認
49.生活の振り返りの機会
50.作品の展示
他者大切にする心
協調性
 
44.協働の達成感と喜び
45.集団活動の機会
46.集団のなかでの個の尊重
空間把握と身体の把握
59.拡がりのある空間の体験
60.立体的な空間の体験
61.俯瞰する体験
62.安全と危険の感覚
身体の発達
63.歩行や立ち上がりを誘う設え
64.身体を動かす仕掛け
65.午睡や休憩での配慮
食への興味と関心
66.調理との関わり
67.食べ物を知る
68.食べ物を育てる体験
 
家庭地域との連携
69.地域の文化と伝統に親しむ
70.地域との連携
71.時間の共有
72.情報を伝える仕掛け
73.スタッフとこどもや家族との関係を  つくる仕掛け
74.家族とつくる環境
75.家族と家族の活動の支援
76.家族同士の関係をつくる仕掛け