多くの人が,自分の身体の大きさに合った小さな場所にいるとき,守られている感覚をもったり,落ち着いた気持ちで過ごすことができます。こどもたちにとっても,身体が包み込まれ,守られている感覚で過ごすことができる場所は,情緒を安定させてくれる存在です。そうした場所でこどもたちは,自分1人になって気持ちを整理したり,複数人で空想の世界に遊ぶこともあるでしょう。
家庭でも,こどもたちはしばしば,押し入れや机の下など小さな場所を見つけて潜り込むことを好みます。多くの病棟では,こどもは自宅や自宅での部屋のサイズよりも大きな「病室」や「病棟」のなかで,また家族などとは違う,単純に同年代であったり同じ病気や怪我などではないこどもたちの集団のなかで,自分の居場所を見つける必要があります。常に広い場所にいることや,集団のなかにいることを強制されることは,わたしたちがそうであるのと同様に,多くのこどもたちにとってストレスになります。
アルコーヴやデンと呼ばれる,潜り込める小さな空間は,こどもたちが「自分」であることができる,こどもたちにとってとても大切な空間です。そして,そうした場所はちょっとした工夫でもつくることができます。

 トップの写真は,小児病棟のプレイルームの奥に設置された,棚で囲まれたままごとゾーンで遊ぶこどもと付添の家族,そこに話しかける病棟保育士の様子です。ままごとsのゾーンは靴を脱いで上がる場所になっています。しゃがむと,棚によって視界が遮られるので,落ち着いて遊ぶことができます。

                       (富山大学附属病院)

 

 こどもたちは「小さな居場所」がとても好きです。写真のように,他の場所が空いていても,小さな場所に集まっている光景はしばしば見られます。このような,「みんなが自然に集まる場所」は,病棟内でのこどもたちどうしの関係構築にも寄与します([42.交流の拡がりを誘う空間)。

 この写真は,こども病院のなかに設置されたこども専用の図書館の一角の様子です。図書館の棚の高さなどはこどもの身体寸法に合わせて設計されています。棚に囲まれた読書のスペースでは,こどもと付添家族が他からの視線がない空間で落ち着いて本を読むことができるようになっています。

 写真は,中学生の患児がひとり,病棟プレイルームの奥まった窓辺で,1人で過ごしている様子です。プレイルームには他のこどもや付添家族もいますが,「みんなのなかでひとり」や,「ひとり」などのように,他者との距離の選択肢があることは自分らしく過ごすことという観点から,とても大切なことです。

情緒の安定
1.アプローチの期待感
2.気持ちの切り替え空間
3.気分転換ができる
4.小さな居場所
5.生活やくつろぎの雰囲気
6.治療・検査時の心的負担の軽減
豊かな感性
7.「触」覚のある環境
8.遊びのなかの触覚
9.全身で感じる遊び
10.においの体験
11.風と気づき
12.光の体験
13.日常的に美に触れる
豊かな心情
14.「演じ」て理解する
15.表現する−音楽
16.表現する−絵画,造形
自然と生命への
畏敬と愛情
 
20.自然に親しむ
21.季節を感じ,楽しむ
22.命を感じ,親しむ
創造性の芽生え
14.「演じ」て理解する
15.表現する−音楽
16.表現する−絵画,造形
17.物語が編み込まれた環境
18.遊び込める仕掛け
19.見立てを誘う環境
豊かな言葉
36.文字や数字がある環境
37.知識や物語の泉に触れる
38.読み聞かせの演出
39.ショウ&テルの機会
思考力
31.伝統文化を遊ぶ
32.自国の文化を知り,親しむ
33.多様性を体感する
34.電子メディアとの適切な距離感
35.「不思議」,科学の目の芽生え
自主性・主体性・意欲
51.「基地」空間
52.アフォーダンスの演出
53.遊びの可視化
54.遊びの保存
55.片付けのための工夫
56.遊びの場の保障
57.集中して遊べる空間
58.プレパレーション
自立と自律
23.時間の可視化
24.日課の可視化
25.音で場面や行為を知る
26.流れをデザインする
27.「自分で」を支える
28.着脱の自立への配慮
29.排泄の自立への配慮
30.身近な手洗い場
 
関わる
喜んで話したり
聞いたりする態度
 
39.ショウ&テルの機会
40.仲間の共有
41.保育単位の連携と柔軟性
42.交流の拡がりを誘う空間
43.育ち合いの仕組み
人に対する愛情と信頼感
43.育ち合いの仕組み
47.命の祝福
48.自己の成長の確認
49.生活の振り返りの機会
50.作品の展示
他者大切にする心
協調性
 
44.協働の達成感と喜び
45.集団活動の機会
46.集団のなかでの個の尊重
空間把握と身体の把握
59.拡がりのある空間の体験
60.立体的な空間の体験
61.俯瞰する体験
62.安全と危険の感覚
身体の発達
63.歩行や立ち上がりを誘う設え
64.身体を動かす仕掛け
65.午睡や休憩での配慮
食への興味と関心
66.調理との関わり
67.食べ物を知る
68.食べ物を育てる体験
 
家庭地域との連携
69.地域の文化と伝統に親しむ
70.地域との連携
71.時間の共有
72.情報を伝える仕掛け
73.スタッフとこどもや家族との関係を  つくる仕掛け
74.家族とつくる環境
75.家族と家族の活動の支援
76.家族同士の関係をつくる仕掛け