経験や身体の大きさ,能力など「自分と違う」人との関わりを楽しみ,喜ぶ態度は,社会でのコミュニケーション能力の土台となります。こどもたちは,お互いにとって,大人とは違って自分の思いを先回りして察してくれたり,気持ちが充分に伝わらなかったりする,「思い通りにならない他者」です。
それでも日常的な関わりの中で,大きいこどもは小さいこどもの面倒をみたり,物事を教えたりするなかで年長者の役割を果たすことを喜びますし,小さいこどもは自分にできないことができる年上のこどもと一緒に過ごすことを楽しみます。日々の生活のなかにそのような育ち合いの仕組みがあることが,こどもたちが関わり合いを当たり前だと思う態度を育てますし,こどもたちにとって大切な環境だと言えます。
療養生活を送るこどもたちにとっては特に,お互いが支え合う大切な仲間になってもいきますし,他者を励ますことで自分自身を励ましていく関係もつくられていきます。「お姉さんが一緒に遊んでくれた」「ケイゴと一緒に嫌いな野菜をがんばって食べた」・・など,療養生活のなかでつくられた関係や記憶が,退院後の気持ちを支えていくこともあります。

                       (富山大学附属病院)

 トップの写真は,廊下に対して壁やドアをもたないオープンなプレイルームで,1つのグループ(患児とその付添家族)の滞在が,異年齢の他の患児と家族を呼び込み,カードゲームの場面に発展していった様子です。
育ち合いの関係をつくるためには,こどもたち同士が自然に関われる,関わりを一定時間継続できる場があることが有効です。例えば多床室もそのひとつです。また,食事を一緒にとることや(「45.集団活動の機会」),廊下から様子が見えて移動の途中などに目がとまったら気軽に立ち寄れる場所,なども育ち合いの関係をつくっていきます。

 

情緒の安定
1.アプローチの期待感
2.気持ちの切り替え空間
3.気分転換ができる
4.小さな居場所
5.生活やくつろぎの雰囲気
6.治療・検査時の心的負担の軽減
豊かな感性
7.「触」覚のある環境
8.遊びのなかの触覚
9.全身で感じる遊び
10.においの体験
11.風と気づき
12.光の体験
13.日常的に美に触れる
豊かな心情
14.「演じ」て理解する
15.表現する−音楽
16.表現する−絵画,造形
自然と生命への
畏敬と愛情
 
20.自然に親しむ
21.季節を感じ,楽しむ
22.命を感じ,親しむ
創造性の芽生え
14.「演じ」て理解する
15.表現する−音楽
16.表現する−絵画,造形
17.物語が編み込まれた環境
18.遊び込める仕掛け
19.見立てを誘う環境
豊かな言葉
36.文字や数字がある環境
37.知識や物語の泉に触れる
38.読み聞かせの演出
39.ショウ&テルの機会
思考力
31.伝統文化を遊ぶ
32.自国の文化を知り,親しむ
33.多様性を体感する
34.電子メディアとの適切な距離感
35.「不思議」,科学の目の芽生え
自主性・主体性・意欲
51.「基地」空間
52.アフォーダンスの演出
53.遊びの可視化
54.遊びの保存
55.片付けのための工夫
56.遊びの場の保障
57.集中して遊べる空間
58.プレパレーション
自立と自律
23.時間の可視化
24.日課の可視化
25.音で場面や行為を知る
26.流れをデザインする
27.「自分で」を支える
28.着脱の自立への配慮
29.排泄の自立への配慮
30.身近な手洗い場
 
関わる
喜んで話したり
聞いたりする態度
 
39.ショウ&テルの機会
40.仲間の共有
41.グループ規模の柔軟性
42.交流の拡がりを誘う空間
43.育ち合いの仕組み
人に対する愛情と信頼感
43.育ち合いの仕組み
47.命の祝福
48.自己の成長の確認
49.生活の振り返りの機会
50.作品の展示
他者大切にする心
協調性
 
44.協働の達成感と喜び
45.集団活動の機会
46.集団のなかでの個の尊重
空間把握と身体の把握
59.拡がりのある空間の体験
60.立体的な空間の体験
61.俯瞰する体験
62.安全と危険の感覚
身体の発達
63.歩行や立ち上がりを誘う設え
64.身体を動かす仕掛け
65.午睡や休憩での配慮
食への興味と関心
66.調理との関わり
67.食べ物を知る
68.食べ物を育てる体験
 
家庭地域との連携
69.地域の文化と伝統に親しむ
70.地域との連携
71.時間の共有
72.情報を伝える仕掛け
73.スタッフとこどもや家族との関係を  つくる仕掛け
74.家族とつくる環境
75.家族と家族の活動の支援
76.家族同士の関係をつくる仕掛け