ここでは,[53.遊びの可視化]などでも触れている,遊びの内容による空間の切り分けや空間への意味づけ,作り込みをゾーニングと呼びます。
多くの場合,こどもたちが遊びを一区切りするたび,あるいはしなければいけないタイミングで「お片付け」の声かけがあります。生活や活動にメリハリをつけ,けじめや整理整頓といった生活習慣を身につける上で,使っていた玩具を片付けることには,大切な役割があります。
その一方で,遊びが保存することで,大きな作品をつくったり,友達の作品に後から参加したりといった,発展的な遊びや協力する遊びを促すこともできます。遊びの痕跡や,途上の成果が見えていることは,[53.遊びの可視化]にも通じる,遊びを誘う要因となります。また,いつでもその遊びに戻れると思えばこそ,遊びを中断して食事などの生活活動に移行することもできるでしょう。せっかく苦労してつくった,完成間近のお城を前にして,片付けて食事だと言われたら誰でも悲しい気持ちにはなるのは当然かとも思われます。食事なんかいいから,今この作品をつくり切らせて欲しい,だって今中断すると壊さなくちゃいけないんでしょ?それは嫌だ!と思う気持ちは,こどもたちの主体性や意欲そのものとも言えるでしょう。

こどもたちの遊びの発展性や継続性を守り,生活のリズムと遊びを共存させるといった観点から,遊びを保存できる空間や決まりをもっている園も少なくありません。こうした環境づくりは,こどもの自主性・主体性や意欲を育てます。また,大きな作品づくりや継続して本を読むなどの遊びを通して創造性の芽生えや思考力を鍛えます。また、他のこどもが残している遊びを壊さないように気をつけたり気を使ったりすること,それを発展させて一緒に遊ぶなどの場面を通じて,他者を大切にする心・協調性も育まれていきます。

 トップの写真は保育施設の事例ですが,こちらでは保育室の中に,棚と壁で3面が囲われた積み木遊びのゾーンをつくっています。このゾーンのなかであれば,作品を壊さずに保存し,次々につくり足していくことができる決まりにしています。そのときどきで,遊びに参加するこどもの人数が異なり,例えばこの積み木のゾーンが今はたくさんのこどもたちの関心を集めているな,もっと大きな作品をつくりたそうだなということであれば,棚を動かしてゾーンを大きくするなどの工夫をしています。 逆に,小人数で落ち着いた遊び方をした方が良いなという時期であれば,ゾーンを小さくします。

 こちらは,ほぼ4面を棚や壁にかこまれた,線路遊びのゾーンです。わずかな隙間から出入りする,こどもたちだけの遊び場所になっています(51.「基地」空間]も参照してください)。棚の内側面には,線路や関連する玩具が置かれています。また壁面には鏡が貼られ,空間を広く感じるとともに,電車が走る様子を複数の視点から楽しむことができる仕掛けになっています。これは60.立体的な空間の体験]につながる環境づくりでもあります。

 

 プレイルームの面積は限られていますから,なかなかこのように遊びを保存しておけるスペースを設けることは難しいことが多いでしょうが,「積み木のお城の一週間」などとしてイベントのように扱い,一定期間での遊びの保存と発展を図るなどの取り組みなどであれば,実現可能性があるかも知れません。

 

情緒の安定
1.アプローチの期待感
2.気持ちの切り替え空間
3.気分転換ができる
4.小さな居場所
5.生活やくつろぎの雰囲気
6.治療・検査時の心的負担の軽減
豊かな感性
7.「触」覚のある環境
8.遊びのなかの触覚
9.全身で感じる遊び
10.においの体験
11.風と気づき
12.光の体験
13.日常的に美に触れる
豊かな心情
14.「演じ」て理解する
15.表現する−音楽
16.表現する−絵画,造形
自然と生命への
畏敬と愛情
 
20.自然に親しむ
21.季節を感じ,楽しむ
22.命を感じ,親しむ
創造性の芽生え
14.「演じ」て理解する
15.表現する−音楽
16.表現する−絵画,造形
17.物語が編み込まれた環境
18.遊び込める仕掛け
19.見立てを誘う環境
豊かな言葉
36.文字や数字がある環境
37.知識や物語の泉に触れる
38.読み聞かせの演出
39.ショウ&テルの機会
思考力
31.伝統文化を遊ぶ
32.自国の文化を知り,親しむ
33.多様性を体感する
34.電子メディアとの適切な距離感
35.「不思議」,科学の目の芽生え
自主性・主体性・意欲
51.「基地」空間
52.アフォーダンスの演出
53.遊びの可視化
54.遊びの保存
55.片付けのための工夫
56.遊びの場の保障
57.集中して遊べる空間
58.プレパレーション
自立と自律
23.時間の可視化
24.日課の可視化
25.音で場面や行為を知る
26.流れをデザインする
27.「自分で」を支える
28.着脱の自立への配慮
29.排泄の自立への配慮
30.身近な手洗い場
 
関わる
喜んで話したり
聞いたりする態度
 
39.ショウ&テルの機会
40.仲間の共有
41.保育単位の連携と柔軟性
42.交流の拡がりを誘う空間
43.育ち合いの仕組み
人に対する愛情と信頼感
43.育ち合いの仕組み
47.命の祝福
48.自己の成長の確認
49.生活の振り返りの機会
50.作品の展示
他者大切にする心
協調性
 
44.協働の達成感と喜び
45.集団活動の機会
46.集団のなかでの個の尊重
空間把握と身体の把握
59.拡がりのある空間の体験
60.立体的な空間の体験
61.俯瞰する体験
62.安全と危険の感覚
身体の発達
63.歩行や立ち上がりを誘う設え
64.身体を動かす仕掛け
65.午睡や休憩での配慮
食への興味と関心
66.調理との関わり
67.食べ物を知る
68.食べ物を育てる体験
 
家庭地域との連携
69.地域の文化と伝統に親しむ
70.地域との連携
71.時間の共有
72.情報を伝える仕掛け
73.スタッフとこどもや家族との関係を  つくる仕掛け
74.家族とつくる環境
75.家族と家族の活動の支援
76.家族同士の関係をつくる仕掛け