食事は文化のひとつであり,食生活は療養にも直接つながるもので,その後の成長や心の形成の基盤のひとつともなります。また,誰かと食をともにすることは,人間関係の構築にもつながります。

 投薬や療養生活での運動量の減少などで,食欲が減退するケースがしばしば見られます。食事やおやつをつくる様子が見えたり,その匂いを感じたりすることは,食や調理への興味関心を育て,食欲を刺激して積極的に食に向かう姿勢に結びついていきます。自分が調理や配膳に関わることも,食への意欲をかき立てます。それは,主体的に生活に向かう姿勢のひとつでもあります。

 トップの写真は,ある病棟のプレイルームにあるミニキッチンのコーナーです。隣には手洗いがあり,水場として利用できます。キッチンと言っても,火が出る機器は置いておらず,実際に調理活動をするときにはプレイルームのテーブルなどを使いますので,ここが調理活動の場になることはありません。しかし,調理道具が常に置かれ,調理の雰囲気が常に目に見えることが,環境による穏やかな刺激となっています。

 

 調理活動の様子です。ガスコンロやホットプレートを使って,小さいホットケーキをつくるなど,こどもたちが食に関心をもったり,積極的に関われるよう調理保育が日常的に保育にとり入れられています。自分たちでおやつなどを作ることで,食材や,調理のプロセス,食事を作る人の気持ち,食べてもらったときの気持ちなどを知っていきます。

 

 

プレイルームにシンク台が置かれている事例もあります。シンクが身近にあることは,調理や家庭らしい雰囲気の演出につながっています。状況が許せば,家族がご家庭からもってきたこどもの好物を皆にふるまう拠点にもできるでしょう。

 

情緒の安定
1.アプローチの期待感
2.気持ちの切り替え空間
3.気分転換ができる
4.小さな居場所
5.生活やくつろぎの雰囲気
6.治療・検査時の心的負担の軽減
豊かな感性
7.「触」覚のある環境
8.遊びのなかの触覚
9.全身で感じる遊び
10.においの体験
11.風と気づき
12.光の体験
13.日常的に美に触れる
豊かな心情
14.「演じ」て理解する
15.表現する−音楽
16.表現する−絵画,造形
自然と生命への
畏敬と愛情
 
20.自然に親しむ
21.季節を感じ,楽しむ
22.命を感じ,親しむ
創造性の芽生え
14.「演じ」て理解する
15.表現する−音楽
16.表現する−絵画,造形
17.物語が編み込まれた環境
18.遊び込める仕掛け
19.見立てを誘う環境
豊かな言葉
36.文字や数字がある環境
37.知識や物語の泉に触れる
38.読み聞かせの演出
39.ショウ&テルの機会
思考力
31.伝統文化を遊ぶ
32.自国の文化を知り,親しむ
33.多様性を体感する
34.電子メディアとの適切な距離感
35.「不思議」,科学の目の芽生え
自主性・主体性・意欲
51.「基地」空間
52.アフォーダンスの演出
53.遊びの可視化
54.遊びの保存
55.片付けのための工夫
56.遊びの場の保障
57.集中して遊べる空間
58.プレパレーション
自立と自律
23.時間の可視化
24.日課の可視化
25.音で場面や行為を知る
26.流れをデザインする
27.「自分で」を支える
28.着脱の自立への配慮
29.排泄の自立への配慮
30.身近な手洗い場
 
関わる
喜んで話したり
聞いたりする態度
 
39.ショウ&テルの機会
40.仲間の共有
41.保育単位の連携と柔軟性
42.交流の拡がりを誘う空間
43.育ち合いの仕組み
人に対する愛情と信頼感
43.育ち合いの仕組み
47.命の祝福
48.自己の成長の確認
49.生活の振り返りの機会
50.作品の展示
他者大切にする心
協調性
 
44.協働の達成感と喜び
45.集団活動の機会
46.集団のなかでの個の尊重
空間把握と身体の把握
59.拡がりのある空間の体験
60.立体的な空間の体験
61.俯瞰する体験
62.安全と危険の感覚
身体の発達
63.歩行や立ち上がりを誘う設え
64.身体を動かす仕掛け
65.午睡や休憩での配慮
食への興味と関心
66.調理との関わり
67.食べ物を知る
68.食べ物を育てる体験
 
家庭地域との連携
69.地域の文化と伝統に親しむ
70.地域との連携
71.時間の共有
72.情報を伝える仕掛け
73.スタッフとこどもや家族との関係を  つくる仕掛け
74.家族とつくる環境
75.家族と家族の活動の支援
76.家族同士の関係をつくる仕掛け