治療の過程で,ちょっとした怪我や感染が命取りになることもあるため,療養環境において安全性や衛生を確保することは大原則です。衛生面については,基本的な配慮事項として,医療用消毒アルコールや手洗いが部屋ごとに設置されている(視覚化による習慣化と動線配慮による実効性の強化),清掃しやすい床素材,埃がたまらないよう足もと部分などがカバーされた作り付けの家具や,動かして清掃しやすい什器が選択されていることなどが挙げられます。

 

                       (富山大学附属病院)

      

 

 予備ベッドや医療用カートなどの置き場所がなく,恒常的に廊下がその置き場所になってしまっている病棟もしばしばあります。このような場合,車いすやベビーカーでの移動や点滴スタンドを押しての移動などの際に,足や機器の下部,点滴のコードがひっかかっての転倒事故や点滴の不具合が起きるなどの危険があります。

 トップの写真の病棟では,廊下に医療器具などの収納スペースが設けられており,廊下の幅が狭くなることなく確保できています。このような収納スペースによって,こどもたちやスタッフの安全だけでなく,廊下の幅を確保することで,医療器具が移動しやすくなり,また人の動線を確保することができます。

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 小上がりの側面にコンセントがあり、小上がりにいても電源への接続が必要なタイプの点滴を継続できるように配慮されている事例ですが、このような設置方法では、ACアダプター付きプラグ(AC電源/箱形の機器に直接プラグがついているもの)が差し込まれた際に,小上がり側面からプラグが飛び出してしまい,横を通る際に引っかかりやすいという問題がありました。側面を上部から若干奥に設置する(この場合,手が届きやすいかにも留意する必要がありますが)と,このような問題は生じにくかったでしょう。
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この写真では,側面よりも上面が若干出ているので,電源部分が飛び出さずに納まっています。

 

 最初からすべての問題が生じないように配慮を行き届かせることは大変難しいことですが,起きている問題を把握し,できればその解決を図るとともに,つぎにそのような計画場面があった場合にこれまでの経験を活かせるよう,気づきや経験を共有していくことが重要だと言えます。他の医療機関などを訪ねて,細かいけれど安全面や利便性に問題があることなどを聞き取ってくるなどもよりよい計画づくりを助けてくれます。

 

 また,少なからぬ医療施設で,安全面を重視するために,段差として認識されうる作り付けの家具なども含めて,プレイルーム等に一切の段差を設けない方針の場合があります。一方で,多少なりとも「危ない」がある環境のなかでこそ,こどもたちが今の自分にできることとできないことを見極め,判断する能力が育つと考えられる場合もあります。高層住宅で育ったこどもが,高所への恐怖をもてず,高いところから落ちて怪我をする場合があるといった報告がありますが,「安全」な環境が,かえって危険の認識の成長を遠ざけ,危ない状況を作り出してしまうという構造です。段差などが一切ないために特に低年齢児で身体能力の発達(登る,降りる,などの統合的な運動発達)が遅れてしまうことも一種の「危険」な状況ではあるでしょう。

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このプレイルームでは,小上がりを設けることについて安全性の面からさまざまな議論や検討がありましたが,家族がくつを脱がずに(結果として気軽に)こどもに付き添えることや,場の切り替え,多人数が腰掛けられる融通性などの複合的な視点から,20㎝の高さでの小上がりの導入を決めました。結果として,落ち着いた,そして特別な場所として認識される人気の場所となっています。各施設で,こどもの年齢構成や付添の状況等が異なりますので,それぞれの考えで環境づくりをされるべきと考えますが,ひとつの事例としてご紹介します。

 

情緒の安定
1.アプローチの期待感
2.気持ちの切り替え空間
3.気分転換ができる
4.小さな居場所
5.生活やくつろぎの雰囲気
6.治療・検査時の心的負担の軽減
豊かな感性
7.「触」覚のある環境
8.遊びのなかの触覚
9.全身で感じる遊び
10.においの体験
11.風と気づき
12.光の体験
13.日常的に美に触れる
豊かな心情
14.「演じ」て理解する
15.表現する−音楽
16.表現する−絵画,造形
自然と生命への
畏敬と愛情
 
20.自然に親しむ
21.季節を感じ,楽しむ
22.命を感じ,親しむ
創造性の芽生え
14.「演じ」て理解する
15.表現する−音楽
16.表現する−絵画,造形
17.物語が編み込まれた環境
18.遊び込める仕掛け
19.見立てを誘う環境
豊かな言葉
36.文字や数字がある環境
37.知識や物語の泉に触れる
38.読み聞かせの演出
39.ショウ&テルの機会
思考力
31.伝統文化を遊ぶ
32.自国の文化を知り,親しむ
33.多様性を体感する
34.電子メディアとの適切な距離感
35.「不思議」,科学の目の芽生え
自主性・主体性・意欲
51.「基地」空間
52.アフォーダンスの演出
53.遊びの可視化
54.遊びの保存
55.片付けのための工夫
56.遊びの場の保障
57.集中して遊べる空間
58.プレパレーション
自立と自律
23.時間の可視化
24.日課の可視化
25.音で場面や行為を知る
26.流れをデザインする
27.「自分で」を支える
28.着脱の自立への配慮
29.排泄の自立への配慮
30.身近な手洗い場
 
関わる
喜んで話したり
聞いたりする態度
 
39.ショウ&テルの機会
40.仲間の共有
41.保育単位の連携と柔軟性
42.交流の拡がりを誘う空間
43.育ち合いの仕組み
人に対する愛情と信頼感
43.育ち合いの仕組み
47.命の祝福
48.自己の成長の確認
49.生活の振り返りの機会
50.作品の展示
他者大切にする心
協調性
 
44.協働の達成感と喜び
45.集団活動の機会
46.集団のなかでの個の尊重
空間把握と身体の把握
59.拡がりのある空間の体験
60.立体的な空間の体験
61.俯瞰する体験
62.安全と危険の感覚
身体の発達
63.歩行や立ち上がりを誘う設え
64.身体を動かす仕掛け
65.午睡や休憩での配慮
食への興味と関心
66.調理との関わり
67.食べ物を知る
68.食べ物を育てる体験
 
家庭地域との連携
69.地域の文化と伝統に親しむ
70.地域との連携
71.時間の共有
72.情報を伝える仕掛け
73.スタッフとこどもや家族との関係を  つくる仕掛け
74.家族とつくる環境
75.家族と家族の活動の支援
76.家族同士の関係をつくる仕掛け