トップの写真の小児病棟では,病棟全体のデザインにあたり,「森にはいろいろな動物たちが住んでいる。傷ついたり,病気になった動物たちは,森の真ん中にある大きな樹に集まり,癒してもらう」という物語を設定し,その物語に沿ってイラストが描かれたり,色彩設計がなされています。

 「物語」を通して,こどもたちが自分たちの状況を理解したり,納得できたりすることがあります。例えばイソップ童話などは,物語やたとえ話を通して,望ましい生き方や考え方を誘導しています。手には細菌などが付いて汚染されているので手を洗おうと呼びかけるポスターには,こどもにそのイメージが伝わるよう「ばい菌」のイラストをつけたりします。[58.プレパレーション]では,医療者の役割を演じることで自分の気持ちを吐露したり,落ち着けたりすることを紹介しています。物語は,こどもと世界の距離を調整してくれるものでもあります。

                       (富山大学附属病院)

 壁や床には動物の絵を描かれ,全体的にやわらかい色彩が使われています。全体に,暖かみのある雰囲気が感じられます。病棟の各部屋のデザインを一つの物語にでてくる動物やキャラクターにする,各部屋の扉に,その部屋の用途を表現するイラストをつけるなど,一貫した物語が編み込まれています。病棟のいろいろいろなところにある動物や植物のイラストは,こどもたちの病棟に対する恐怖心を軽減させ,家族やスタッフとの会話のきっかけにもなっています。

 こうした環境づくりは,こどもたちの感性や,想像力,創造力を引き出していきます。これらは[14.「演じ」て理解する]ことや,[38.読み聞かせの演出]などによる世界の拡大にも関連します。

                       (富山大学附属病院)

 

情緒の安定
1.アプローチの期待感
2.気持ちの切り替え空間
3.気分転換ができる
4.小さな居場所
5.生活やくつろぎの雰囲気
6.治療・検査時の心的負担の軽減
豊かな感性
7.「触」覚のある環境
8.遊びのなかの触覚
9.全身で感じる遊び
10.においの体験
11.風と気づき
12.光の体験
13.日常的に美に触れる
豊かな心情
14.「演じ」て理解する
15.表現する−音楽
16.表現する−絵画,造形
自然と生命への
畏敬と愛情
 
20.自然に親しむ
21.季節を感じ,楽しむ
22.命を感じ,親しむ
創造性の芽生え
14.「演じ」て理解する
15.表現する−音楽
16.表現する−絵画,造形
17.物語が編み込まれた環境
18.遊び込める仕掛け
19.見立てを誘う環境
豊かな言葉
36.文字や数字がある環境
37.知識や物語の泉に触れる
38.読み聞かせの演出
39.ショウ&テルの機会
思考力
31.伝統文化を遊ぶ
32.自国の文化を知り,親しむ
33.多様性を体感する
34.電子メディアとの適切な距離感
35.「不思議」,科学の目の芽生え
自主性・主体性・意欲
51.「基地」空間
52.アフォーダンスの演出
53.遊びの可視化
54.遊びの保存
55.片付けのための工夫
56.遊びの場の保障
57.集中して遊べる空間
58.プレパレーション
自立と自律
23.時間の可視化
24.日課の可視化
25.音で場面や行為を知る
26.流れをデザインする
27.「自分で」を支える
28.着脱の自立への配慮
29.排泄の自立への配慮
30.身近な手洗い場
 
関わる
喜んで話したり
聞いたりする態度
 
39.ショウ&テルの機会
40.仲間の共有
41.保育単位の連携と柔軟性
42.交流の拡がりを誘う空間
43.育ち合いの仕組み
人に対する愛情と信頼感
43.育ち合いの仕組み
47.命の祝福
48.自己の成長の確認
49.生活の振り返りの機会
50.作品の展示
他者大切にする心
協調性
 
44.協働の達成感と喜び
45.集団活動の機会
46.集団のなかでの個の尊重
空間把握と身体の把握
59.拡がりのある空間の体験
60.立体的な空間の体験
61.俯瞰する体験
62.安全と危険の感覚
身体の発達
63.歩行や立ち上がりを誘う設え
64.身体を動かす仕掛け
65.午睡や休憩での配慮
食への興味と関心
66.調理との関わり
67.食べ物を知る
68.食べ物を育てる体験
 
家庭地域との連携
69.地域の文化と伝統に親しむ
70.地域との連携
71.時間の共有
72.情報を伝える仕掛け
73.スタッフとこどもや家族との関係を  つくる仕掛け
74.家族とつくる環境
75.家族と家族の活動の支援
76.家族同士の関係をつくる仕掛け