こどもたちが遊びに集中できることは、こどもがその活動をしたいという主体性や意欲をもて,それを持続することができていると言い換えることができます。“自立的に遊んでいる”とも言えるでしょう。

 そのような観点から,遊びへの集中力を環境がサポートできる部分は少なからずあります。遊びに集中できること,遊びが持続発展していくことで,思考力や想像力を存分に深めることができますし,絵本を読むことなどが対象となれば,物語の世界に没頭できることで豊かな言葉や想像力にもつながるでしょう。もちろん,集中して遊び込めることは情緒の安定という側面もあり,自分や自分たちの世界観を深めていくプロセスのなかで,感性や心情などの心的世界の深化の効果も期待されます。

 

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 また,視覚的に他の空間と仕切られたゾーンでは,“自分の遊び”の世界をつくりやすいと言えます。空間的に幅や高さが「くびれ」ている,ゲート状の空間を通っていくと,世界の切り替えを意識づけやすいでしょう。ドアの開閉も,同様に世界の切り替わりを感じさせます。

 写真は、大人が覗ける高さの壁に囲われたおままごとのゾーンです。中の様子が見えるよう、窓も開いています。完全に、中の世界に浸って遊ぶことができる空間になっています。

 自分だけの世界にも入りやすい環境づくりとしては,まずは座る「向き」の設定があげられます。みんなとの物理的距離というよりも心理的な距離を,身体の向き,視線の向きで調整します。

 写真は,顔を上げると「みんな」の様子が見える場所に,机と椅子が設置されており(向かいは病棟保育士の作業机),カーテンを引いた状態では,右側に見える棚とともに視界が遮られて,集中することができます。この席は,学童などが勉強もできるようにという目的でつくられましたが,いまでは年少児にも人気のある場所になっています。この場所では,振り返れば「みんな」がいる,様子がわかる,という安心感のなかで,自分の世界に入ることができます。

作り込まれた場所だけではなく,ちょっとした隙間や「小さな空間(4.小さな居場所」)」も,こどもたちにとって集中して遊び込める場所になります。写真は,入院してきたばかりの小学生のこどもが、ひとりでプレイルームにやってきて、小さな囲われた場所で玩具を触りはじめたところです。不慣れな環境への不安な気持ちが、遊びに集中することで和らいでいきます。ちょうど,こどもたちの身体寸法にあった「隙間に見える空間」や,段差などによる「他の場所と異なる場所の雰囲気」が,集中して遊べる環境の要素となっています。

 

情緒の安定
1.アプローチの期待感
2.気持ちの切り替え空間
3.気分転換ができる
4.小さな居場所
5.生活やくつろぎの雰囲気
6.治療・検査時の心的負担の軽減
豊かな感性
7.「触」覚のある環境
8.遊びのなかの触覚
9.全身で感じる遊び
10.においの体験
11.風と気づき
12.光の体験
13.日常的に美に触れる
豊かな心情
14.「演じ」て理解する
15.表現する−音楽
16.表現する−絵画,造形
自然と生命への
畏敬と愛情
 
20.自然に親しむ
21.季節を感じ,楽しむ
22.命を感じ,親しむ
創造性の芽生え
14.「演じ」て理解する
15.表現する−音楽
16.表現する−絵画,造形
17.物語が編み込まれた環境
18.遊び込める仕掛け
19.見立てを誘う環境
豊かな言葉
36.文字や数字がある環境
37.知識や物語の泉に触れる
38.読み聞かせの演出
39.ショウ&テルの機会
思考力
31.伝統文化を遊ぶ
32.自国の文化を知り,親しむ
33.多様性を体感する
34.電子メディアとの適切な距離感
35.「不思議」,科学の目の芽生え
自主性・主体性・意欲
51.「基地」空間
52.アフォーダンスの演出
53.遊びの可視化
54.遊びの保存
55.片付けのための工夫
56.遊びの場の保障
57.集中して遊べる空間
58.プレパレーション
自立と自律
23.時間の可視化
24.日課の可視化
25.音で場面や行為を知る
26.流れをデザインする
27.「自分で」を支える
28.着脱の自立への配慮
29.排泄の自立への配慮
30.身近な手洗い場
 
関わる
喜んで話したり
聞いたりする態度
 
39.ショウ&テルの機会
40.仲間の共有
41.保育単位の連携と柔軟性
42.交流の拡がりを誘う空間
43.育ち合いの仕組み
人に対する愛情と信頼感
43.育ち合いの仕組み
47.命の祝福
48.自己の成長の確認
49.生活の振り返りの機会
50.作品の展示
他者大切にする心
協調性
 
44.協働の達成感と喜び
45.集団活動の機会
46.集団のなかでの個の尊重
空間把握と身体の把握
59.拡がりのある空間の体験
60.立体的な空間の体験
61.俯瞰する体験
62.安全と危険の感覚
身体の発達
63.歩行や立ち上がりを誘う設え
64.身体を動かす仕掛け
65.午睡や休憩での配慮
食への興味と関心
66.調理との関わり
67.食べ物を知る
68.食べ物を育てる体験
 
家庭地域との連携
69.地域の文化と伝統に親しむ
70.地域との連携
71.時間の共有
72.情報を伝える仕掛け
73.スタッフとこどもや家族との関係を  つくる仕掛け
74.家族とつくる環境
75.家族と家族の活動の支援
76.家族同士の関係をつくる仕掛け