地域との関係は,こどもたちの療養生活を支えるとともに,地域での生活に移行・復帰していくための重要なアンカーになります。
病院で過ごすこどもたちにとっては,保育所や幼稚園,こども園,学校や,先生,友達とが,多くの場合「地域(日常生活)」との接点になるでしょう。そうした存在との関係が続くよう,サポートをしたり,仕組みを提供できる環境をつくりたいものです。“続く”だけではなく,書類上では入学/進級しているけれどまだ登校できていないクラスで,見知らぬ「ともだち」が待っている環境,そのような関係を新たに“つくる”こともあるでしょう。
病棟保育士や,患児の担任の教員や保育者との連携によって,このような環境がつくられている事例がしばしば報告されています。
また,地域からボランティアの方に来ていただいての,様々なイベントや保育のサポートなども地域との関係づくりの事例と言えます。このようなボランティア活動の受け入れによって,地域に良き理解者が増え,地域の人的・物理的環境の醸成につながっていくでしょう。
ボランティアの方が,手遊びや読み聞かせの会を開きます。プレイルームが会場に使われ,出てこられるこどもたちが,ときには家族と一緒に,集まってきます。入院生活が長いこどもたちにとっては,日々にちょっとした変化を与えてくれるイベントであり,楽しみになります。
病棟を,ボランティアのクリニクラウンが訪問して,プレイルームや病室でこどもたちに芸を見せてくれたりという笑いの時間をつくっています。こどもや家族にとって,気分転換にもなる楽しいひとときです。
この写真の病棟では,ラウンジ,こどもの見舞客のためにワニ形の遊具を置いています。入院患児のきょうだいがお見舞いに来たときなど,病棟には(感染症の予防のため)入ることができず,居場所がないということもしばしばあります。このような設えによって,こどもがお見舞いに喜んで来られるようになり,家族の関係や,学校などの友人との関係が継続されていくことが期待できるでしょう。
【参考文献】シンシア・レイブロック(著),常田益代(訳),服部由紀子(訳):『ヘルスケア環境のデザイン −世界の事例にみるその思想と細部設計』,p243を参照して作成
ほかに,障碍をもちながら退院していくこどものために,NICUを中心にした地域の医療とそのサポートの体制を医療,保育,行政,学校,施設を含む協議会によって構築していこうと,勉強会や症例検討会を定期的に開催している例もあります。医療が「医療機関」に閉じたものではなく,地域全体でかたちづくっていくものとして再生されている事例と言えます。このような活動によって地域の方の医療への関心も高められることや,地域のコミュニティの醸成も期待できます。
【参考文献】帆足英一(著), 長嶋正実(著):『実践 医療保育 いま−現場からの報告』,p121
心 | |
情緒の安定 | |
1.アプローチの期待感 | |
2.気持ちの切り替え空間 | |
3.気分転換ができる | |
4.小さな居場所 | |
5.生活やくつろぎの雰囲気 | |
6.治療・検査時の心的負担の軽減 | |
豊かな感性 | |
7.「触」覚のある環境 | |
8.遊びのなかの触覚 | |
9.全身で感じる遊び | |
10.においの体験 | |
11.風と気づき | |
12.光の体験 | |
13.日常的に美に触れる | |
豊かな心情 | |
14.「演じ」て理解する | |
15.表現する−音楽 | |
16.表現する−絵画,造形 | |
自然と生命への 畏敬と愛情 |
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20.自然に親しむ | |
21.季節を感じ,楽しむ | |
22.命を感じ,親しむ | |
知 | |
創造性の芽生え | |
14.「演じ」て理解する | |
15.表現する−音楽 | |
16.表現する−絵画,造形 | |
17.物語が編み込まれた環境 | |
18.遊び込める仕掛け | |
19.見立てを誘う環境 | |
豊かな言葉 | |
36.文字や数字がある環境 | |
37.知識や物語の泉に触れる | |
38.読み聞かせの演出 | |
39.ショウ&テルの機会 | |
思考力 | |
31.伝統文化を遊ぶ | |
32.自国の文化を知り,親しむ | |
33.多様性を体感する | |
34.電子メディアとの適切な距離感 | |
35.「不思議」,科学の目の芽生え | |
自主性・主体性・意欲 | |
51.「基地」空間 | |
52.アフォーダンスの演出 | |
53.遊びの可視化 | |
54.遊びの保存 | |
55.片付けのための工夫 | |
56.遊びの場の保障 | |
57.集中して遊べる空間 | |
58.プレパレーション | |
自立と自律 | |
23.時間の可視化 | |
24.日課の可視化 | |
25.音で場面や行為を知る | |
26.流れをデザインする | |
27.「自分で」を支える | |
28.着脱の自立への配慮 | |
29.排泄の自立への配慮 | |
30.身近な手洗い場 | |
関わる | |
喜んで話したり 聞いたりする態度 |
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39.ショウ&テルの機会 | |
40.仲間の共有 | |
41.保育単位の連携と柔軟性 | |
42.交流の拡がりを誘う空間 | |
43.育ち合いの仕組み | |
人に対する愛情と信頼感 | |
43.育ち合いの仕組み | |
47.命の祝福 | |
48.自己の成長の確認 | |
49.生活の振り返りの機会 | |
50.作品の展示 | |
他者を大切にする心 協調性 |
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