トップの写真の家具と設えは、40㎝の高さの台を挟んで,20㎝の高さの小上がりのスペースと,床と同じ高さの畳のスペースがある空間です。この±0㎝,+20㎝,+40㎝という高さの組み合わせによって生まれる段差が,「座ったときの机状のスペース」「立ったときの机状のスペース」としてこどもたちに使われています。40㎝の高さは,大人が座る場所にもなります。20㎝の高さの小上がりに大人が腰掛けるときには,足を投げ出して座る姿勢になります。
同じ場所で,20㎝の高さの段差はこどもの「座る」場所にもなっています。
ここでは「高さ」が,さまざまな居方をアフォードしています。こうしたさまざまな場面を喚起する設えは,居方の豊かさにつながります。
[63.歩行や立ち上がりを誘う設え]や[64.身体を動かす仕掛け]では立ち上がりや,段差を登るなどの行為がアフォードされています。また、そうした行為そのものがこどもたちにとって挑戦したり、身体を動かしたりする遊びになっています。
アフォーダンスとは、「もの」などの環境に内在する、動物にとっての行為の可能性と定義されます。人などの動物はそれがある「もの」であるから行為・行動を起こすのではなく、それがある行為・行動を可能にするものであるから、その行為に至るのだ、という考え方です。例えば切り株に人が腰掛けるのは、それがいすだからではなく,座るのにちょうど良い高さ・大きさだったからだ・・などと説明し、「(その)切り株(の形状や状態)が、人に、座ることをアフォードした」と表現します。
こどもたちは、このような、ものなどの環境と自分の行為・行動の関係についてより原理的です。例えば「○○ちゃん、テーブルには登らないよ」と、口にする機会が,親や保育者にはしばしばあります。それは、テーブルがこどもにとって、登りたくなる、登れるだろうと判断できる形状をしているからです。テーブルの形状や状態は、こどもに、登ることをアフォードしているのです。逆に、テーブルの上に例えば食事が所狭しと並んでいたら、それでも登るこどもは少ないですね。そのとき、テーブルの状態は、こどもにとって登れない状態だと判断されている(テーブルの状態が、登ることをアフォードしていない)のです。
アフォーダンスの概念で環境を見てみると、こどもの身の回りにはたくさんのアフォーダンスがあること、またアフォーダンスの演出をすることで、こどもたちの挑戦心や冒険心をくすぐるながら、こどもたちが自ら、やりたいと思う気持ちを引き出すことができることに気づきます。このように、行為や行動を誘う仕掛けを周囲に配することで、こどもたちの自主性・主体性・意欲を育てることができます。またあるものと、自分の身体や身体能力がある行為・行動が可能かどうかの判断と結果を積み重ねることで、空間と自分の身体を適切に把握できる能力が育っていきます。また、段差を腰掛けやテーブルなどとして使っていくことは、一種の見立てとも言え、ものから遊びを発展させていく思考力や、豊かな感性の成長にもつながるでしょう。
明確な目的がある遊具ではなく、段差や面積などが提示されるだけの遊具や家具、オブジェなどはこどもにさまざまな行為や遊びをアフォードします。
心 | |
情緒の安定 | |
1.アプローチの期待感 | |
2.気持ちの切り替え空間 | |
3.気分転換ができる | |
4.小さな居場所 | |
5.生活やくつろぎの雰囲気 | |
6.治療・検査時の心的負担の軽減 | |
豊かな感性 | |
7.「触」覚のある環境 | |
8.遊びのなかの触覚 | |
9.全身で感じる遊び | |
10.においの体験 | |
11.風と気づき | |
12.光の体験 | |
13.日常的に美に触れる | |
豊かな心情 | |
14.「演じ」て理解する | |
15.表現する−音楽 | |
16.表現する−絵画,造形 | |
自然と生命への 畏敬と愛情 |
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20.自然に親しむ | |
21.季節を感じ,楽しむ | |
22.命を感じ,親しむ | |
知 | |
創造性の芽生え | |
14.「演じ」て理解する | |
15.表現する−音楽 | |
16.表現する−絵画,造形 | |
17.物語が編み込まれた環境 | |
18.遊び込める仕掛け | |
19.見立てを誘う環境 | |
豊かな言葉 | |
36.文字や数字がある環境 | |
37.知識や物語の泉に触れる | |
38.読み聞かせの演出 | |
39.ショウ&テルの機会 | |
思考力 | |
31.伝統文化を遊ぶ | |
32.自国の文化を知り,親しむ | |
33.多様性を体感する | |
34.電子メディアとの適切な距離感 | |
35.「不思議」,科学の目の芽生え | |
自主性・主体性・意欲 | |
51.「基地」空間 | |
52.アフォーダンスの演出 | |
53.遊びの可視化 | |
54.遊びの保存 | |
55.片付けのための工夫 | |
56.遊びの場の保障 | |
57.集中して遊べる空間 | |
58.プレパレーション | |
自立と自律 | |
23.時間の可視化 | |
24.日課の可視化 | |
25.音で場面や行為を知る | |
26.流れをデザインする | |
27.「自分で」を支える | |
28.着脱の自立への配慮 | |
29.排泄の自立への配慮 | |
30.身近な手洗い場 | |
関わる | |
喜んで話したり 聞いたりする態度 |
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39.ショウ&テルの機会 | |
40.仲間の共有 | |
41.保育単位の連携と柔軟性 | |
42.交流の拡がりを誘う空間 | |
43.育ち合いの仕組み | |
人に対する愛情と信頼感 | |
43.育ち合いの仕組み | |
47.命の祝福 | |
48.自己の成長の確認 | |
49.生活の振り返りの機会 | |
50.作品の展示 | |
他者を大切にする心 協調性 |
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