こどもたちは、乳児期から探索行動の拠点として心理的な「安全基地」を必要とすることが知られています。安全基地は、しばしば母親や保育者を指して言われ、見守ってくれている人、何かあればいつでも助けてくれる人、不安を感じればその人のところへ戻れるという確信が、積極的な探索を誘うとされています。

 母親や保育者といった人だけでなく、物理的な「基地」や「拠点」となる空間や場所も、こどもたちの心理的な安全基地となります。どうしても大人(治療者)のペースが優先されてしまいがちな療養環境にあって,こどもたちが「ここは自分の場所」だと思える心理的な安全基地をもてることは,環境へのなじみを助け,こどもの自己尊厳を守ることにつながります。このような場所では、こどもたちは保育者や保護者が一緒にいなくとも、集中して、そして安心して遊び込むことができます。これはこどもたちの主体的な活動や、自主的に動こう、遊ぼうという意欲の成長のサポートとも言えます。このような心理は、自律と自立の精神の成長や、情緒の安定にもつながります。また、自分や自分たちだけの場所を見つけると、そこに何らかの見立てや意味づけをしたり、場所や空間のカスタマイズやアレンジをしたりしようとする行動もしばしば見られます。例えば「基地」に玩具を持ち込んで遊ぶなどもその一つです。空間をパーソナライズするこうした行動のなかで、思考力も育ちます。

作り付けの家具で囲まれた場所に,さらにおもちゃの箱を加えて「囲まれた」空間性を強めています。発泡プラスチックのブロックや、大型の木のブロックなど、こどもたちが簡単に動かせるモノも、こどもたちの「基地」づくりを助けます。こどもたちが自分たちで空間をアレンジしやすいことで、自分たちの拠点を積極的につくろうという気持ちになれます。それが可能だと認識することは、自主性とともに、こどもたちの自信も育てるでしょう。

 

プレイルームの窓辺に設けられた小さなスペースに,こどもたちが集まって話をしています。窓からは街の様子が見えます。プレイルームから,この場所の様子は見えるのですが,この場所の「なか」にいるこどもたちにとっては周囲から意識的に切り離された自分たちだけの居場所です。ここは少なくとも今この瞬間は、彼らだけの「基地」で、「隠れ家」となっています。

  このように,周囲や上部を覆ったり囲んだりする要素があることで、その場所は安定的な・守られた雰囲気をもちます。

 

情緒の安定
1.アプローチの期待感
2.気持ちの切り替え空間
3.気分転換ができる
4.小さな居場所
5.生活やくつろぎの雰囲気
6.治療・検査時の心的負担の軽減
豊かな感性
7.「触」覚のある環境
8.遊びのなかの触覚
9.全身で感じる遊び
10.においの体験
11.風と気づき
12.光の体験
13.日常的に美に触れる
豊かな心情
14.「演じ」て理解する
15.表現する−音楽
16.表現する−絵画,造形
自然と生命への
畏敬と愛情
 
20.自然に親しむ
21.季節を感じ,楽しむ
22.命を感じ,親しむ
創造性の芽生え
14.「演じ」て理解する
15.表現する−音楽
16.表現する−絵画,造形
17.物語が編み込まれた環境
18.遊び込める仕掛け
19.見立てを誘う環境
豊かな言葉
36.文字や数字がある環境
37.知識や物語の泉に触れる
38.読み聞かせの演出
39.ショウ&テルの機会
思考力
31.伝統文化を遊ぶ
32.自国の文化を知り,親しむ
33.多様性を体感する
34.電子メディアとの適切な距離感
35.「不思議」,科学の目の芽生え
自主性・主体性・意欲
51.「基地」空間
52.アフォーダンスの演出
53.遊びの可視化
54.遊びの保存
55.片付けのための工夫
56.遊びの場の保障
57.集中して遊べる空間
58.プレパレーション
自立と自律
23.時間の可視化
24.日課の可視化
25.音で場面や行為を知る
26.流れをデザインする
27.「自分で」を支える
28.着脱の自立への配慮
29.排泄の自立への配慮
30.身近な手洗い場
 
関わる
喜んで話したり
聞いたりする態度
 
39.ショウ&テルの機会
40.仲間の共有
41.保育単位の連携と柔軟性
42.交流の拡がりを誘う空間
43.育ち合いの仕組み
人に対する愛情と信頼感
43.育ち合いの仕組み
47.命の祝福
48.自己の成長の確認
49.生活の振り返りの機会
50.作品の展示
他者大切にする心
協調性
 
44.協働の達成感と喜び
45.集団活動の機会
46.集団のなかでの個の尊重
空間把握と身体の把握
59.拡がりのある空間の体験
60.立体的な空間の体験
61.俯瞰する体験
62.安全と危険の感覚
身体の発達
63.歩行や立ち上がりを誘う設え
64.身体を動かす仕掛け
65.午睡や休憩での配慮
食への興味と関心
66.調理との関わり
67.食べ物を知る
68.食べ物を育てる体験
 
家庭地域との連携
69.地域の文化と伝統に親しむ
70.地域との連携
71.時間の共有
72.情報を伝える仕掛け
73.スタッフとこどもや家族との関係を  つくる仕掛け
74.家族とつくる環境
75.家族と家族の活動の支援
76.家族同士の関係をつくる仕掛け