70.保護者とつくる環境

保護者とともに保育を行ったり,環境をつくったりすることは,第一には園と保護者の関係づくりにつながります。第二には,保護者の環境の価値への気づきを誘うことができるというメリットもあります。園で取り組まれている環境づくりには,ご家庭でも是非採り入れていただきたいことが多分にあるのではないかと思います。いまの社会では,保育所や幼稚園では保護者を育てる,子育てやこどもとともにある生活の演出やマネジメントを支援する,という役割も少なからず担っています。保育参加や,環境づくりへの協力を積極的に呼びかけている園も多くの事例があります(保育参加は,人的な環境づくりのひとつとも言えるでしょう)。特に保育所では,就労している保護者に負担がかからないようにと,あまり保育や環境づくりへの参加を求めない園もありますが,保育への参加による時間や価値観の共有,あるいは経験や思い出はまた,何にも替えがたいもののひとつではないでしょうか。

こちらの園では,こどもさんの誕生日と,その半年前/後の,年に2回,保護者に半日の保育参加を呼びかけています。登園から,遊びなどの活動,昼食まで(希望すれば終日)を,自分のこどもと一緒に園で過ごすことで,こどもの活動の様子,他のこどもとの関わりの様子,保育者からの声かけの様子などを含めて一日の生活の流れなどを保護者が理解する機会として位置づけています。
特に初めての子育ての保護者や,近くに子育てモデルがいない保護者にとっては,非常に貴重な機会なのではないでしょうか。
小人数のグループに分かれての活動や,保護者の得意なことで保育を支援するボランティアのような立場での保育参加の機会を積極的に設けている園もあります。

これは,園と保護者が協力してつくった遊具の例です。遊具づくりに保護者の参加を呼びかける例は少なからずあります。こどもたちにとっては,お父さん,お母さんが造ってくれた遊具!は本当に嬉しいでしょう。またこうした活動は保護者同士の関係づくりにもつながりますし,特に男親にとっては,子育てや保育に主体的に係わる機会としても大事な役割を担っているようです。

*園のご要望により、加工しない写真を掲載しています。

遊具は,メンテナンスの必要こそあれ一度つくってしまうと数年・十数年は使い続けるものですが,保護者の顔ぶれは毎年違います。
この園では,毎年のイベントとして,夏になると保護者と園が協力して園庭に「じゃぶじゃぶ池」をつくります。丸太を組み,土を盛って井戸水を汲み,池にするのです。池の中央には毎年趣向の違う仮設の遊具が登場します。普段,園庭の別の場所に置かれているジャングルジムなどを,協力して動かしたりしています。この園では他に恒常的な遊具をつくったり補修したりの活動もありますが,毎年のイベントになっている活動によって,園で過ごすすべてのこどもと保護者に,「お父さん・お母さんが環境をつくる機会」があることになります。どのこどもたちも,夏が来ることをとても楽しみにしています。