57.拡がりのある空間の体験

3.小さな居場所]や[4.くつろいだ雰囲気],[50.「基地」空間],[56.集中して遊べる空間]などでは,おおむね小さい空間や場所が,こどもたちの安心感や集中力を高めるとご紹介しています。
一方で,こどもたちは大きい空間,(水平方向への)拡がりのある空間に身を置くと,思わず走り出したくなったり,大きな声を出したくなったりなど,知らず「発散」のモードになります。こどもたちにとっては,集中と発散の機会がともにあることが,心身のバランスの良い発達を促します。

今日では,園舎内や,敷地内に拡がりのある空間がない園もあります。園舎内に充分な広さのホールがあればもちろん良いですが,こどもたちが思いっきり「発散」のモードになるためには,必ずしも園舎内である必要はありませんので,園庭や公園などの外部空間を体験させたいものです。

トップの写真は,都内の都市公園に遠足に来た園児の様子です。思わず広い空間に駆けだしています。思わず身体が動く,走りたくなる,このようなこどもたちの主体的な意欲を引き出しながら身体が育つ環境が望ましいことはもちろんのことだと思います。

拡がりのある,半屋外の広縁です。保育室から連続した,外廊下のような位置づけです。木の床になっており,こどもたちの遊び場所として活用されています。この広々とした空間もやはり,こどもたちが思わず身体を大きく動かしたくなる空間です。保育室から外に遊びが連続してくること,また広縁の長手方向に遊びが展開することで,他のクラスのこどもたちが自然に混ざり合って遊ぶ場所になっています。

廊下(テラス)の幅は狭いながら,それが小さな中庭を介して連続していることで,見える空間には横方向の拡がりが感じられます。この半屋外のテラスも,保育室から遊びがしみ出してきて,こどもたちが自然に交流する場所となっています。

(あけぼの幼稚園)

写真は,保育室から園庭への連続が強く感じられる空間構成の園の様子です,写真手前が保育室,奥が園庭で,間に木で仕上げられた半屋外のテラスが見えます。屋内,半屋外,屋外という連続する空間を感じ,自然に外に出て行きたい気持ちが誘われます。また,少し落ち着いていたいなどのこどもそれぞれの気分によって,屋内・半屋外・屋外というオープンさ/親密さが異なる空間性の場所のなかから自分のそのときの居場所を見つけやすい,他者や活動との距離感を調整しやすい環境だと言えます。

(あけぼの幼稚園)

ロジ状に連続している,半屋外のテラスから保育室にアプローチする園での2階テラスの様子です。手すり子がとても細いため,園庭に視覚的に連続しているという拡がりを感じます。またテラスと保育室が一直線ではなく,角度がついているために,かえって空間の奥行きや拡がりを感じられる空間となっています。