39.仲間の共有

誰しも,自分が知っているものごとや人には親しみをもちます.ともに成長する仲間をこどもや親どうしが知ること(仲間の共有)は,保護者が園でのこどもの交友関係や生活を理解しこどもの気持ちを全面的に受け止める助けとなり,こどもの感性の発達や情緒の安定につながります.こどもがお友達とどのように関わっているかを聞き,ときには適切な助言を行うことで,協調性や思いやりを育むこともできます.また互いを知ることがきっかけとなり,保護者と他のこどもや保護者間の交流,保護者を介したこどもどうしの交流へとつながっていきます.また,職員の紹介は保護者の職員への親しみやすさを生み,保護者と職員の関係づくりを助けます.

職員紹介があると,保護者が職員の名前を覚えやすく,保護者と職員の関係づくりが促進されます.また各家庭でこどもが保護者に園での生活を話す際などにも,職員の顔と名前が一致していることは保護者の理解を助けます.例えば玄関ホールなど全園児と保護者が目にする掲示板に園の職員全員の担当クラスと名前を,写真を添えて紹介している例(上)や,クラスのクロークルームでクラス担当の保育者とこどもの紹介をする例などがあります(下).園の規模にもよりますが,クラス担任以外の職員もこどもに関わるローテーション制の園の場合は,職員全員の紹介を保護者が目にできるよう紹介されていることが望ましいでしょう.

■ こどもと家族の紹介

こどもの育ちを支える家族も,大切な仲間です.こどもと保育者と,保護者が一緒に生活をつくれるよう,こどもがお互いの保護者を覚え,家族どうしがお互いを覚えて関わりのきっかけをもてるように環境づくりでサポートをしたいものです.こどもにとっても,友達の家族の顔を覚えることが関わりのきっかけになります.
上の写真の園では,全園児と保護者が見る掲示板で,月ごとに誕生日を迎える園児を家族のコメントを添えて紹介しています.

またこの園ではイベント(夏の夕涼み会)の際に,園児の家族全員に紙一枚のなかで自由にこどもの紹介をしてもらう「うちの子自慢」という取り組みを毎年しています.自分のこどもの素敵なところを他の保護者やこどもの友達に紹介するという取り組みを通じて,保護者自身がこどもと再度向かい合うきっかけにもなっていることでしょう.

この園では,「クラス便り」を,お子さんのクラスだけではなく,全クラス分を冊子にして配布しています.ご家庭では全てのクラスの保育の様子がわかりますし,全てのクラスのこどもに興味関心をもつきっかけになります.園の規模にもよりますが,延長保育時などに合同保育を実施したり,クラスを超えた交流を期待する場合には,園全体で「仲間」を共有できる仕掛けが有効でしょう.これは,こどもの成長・発達への見通しを保護者がもつことにもつながります.

■ 園のみんなで,家族ごと迎え入れる

この園では,こどもたちの家族も園の大切な仲間であり,学年を超えて園全体がこどもを育てながら親自身や地域と共に育っていく大切な共同体だと考えています.写真は,全てのクラスの新入園児と家族を,入園式の際に写真に納め,園のみんなが通る玄関ホールに掲示して紹介している様子です.掲示物がこどもの目線にあり,またお迎えに行った親がこどもを連れて一緒に階段を上ってくると,必ず目に入る場所に掲示されているなど,掲示の高さや場所にも配慮がされています.

■ 仲間の紹介を通した安心づくり

この写真は1歳児の保育室にある着替え入れですが,入園式の際に家族の写真を撮り,引き出しの小窓に飾っています.就園したばかりで不安もあるこどもたちが,親御さんの顔や,親御さんに抱かれた自分の写真をみて,安心できるようにとの配慮も込められています.こどもちとっては,ここ(園)が家庭の延長にある,安心できる場所だという気持ちにもつながるでしょう.また他者との接触経験があまりないこどもたちが,友達の親御さんを見て泣いてしまったりすることがありますが,写真を通して普段から目にすることで,友達の保護者に対しても親近感を持ち,不安を感じなくなるそうです.