5.延長保育スペースでの配慮

「延長(預かり)保育」の時間は,コアタイムよりもこどもの数が少なく,特に夕方から夜にかけての時間帯にはこどもの数が減っていき,こどもが寂しい思いをすることもあります.1人ひとりのこどもにとっては,全ての時間が大切な時間であり,「時間つぶし」の時間などないはずです.延長保育の時間を含め,全ての時間が充実することは,こどもの遊びや生活への意欲,情緒の安定,にもつながります.またこの時間帯の,小集団で,保育者と密着した,異年齢が混ざり合うという特徴を活かした保育は,こどもの創造力や感性を伸ばすでしょう.保育時間が長いことが「ラッキー」と思えるよう,空間や玩具,保育で特別な環境を演出したいものです.

延長保育の時間には,こどもの数が減るのに合わせて,だんだん保育集団と部屋を集約していくことが一般的です.最後には広い部屋にぽつんとこどもが遊んでいる,という風景にならないことが大切です。保育室が設えなどに分節されていると視覚的に,空間の広さに対するこどもの数,密度が低くなりすぎないよう調整することにも役立ちます.

保育室ごとの環境づくりを工夫しても,「みんなが居なくなった,いつもの部屋」という状況を寂しく感じる子もいます.がらりと雰囲気と気分を変え,生活にメリハリをつけるため,延長保育専用室を設ける場合もあります.この写真は,安心感や親密感,家庭的な雰囲気を大切にした延長保育専用室の例です.日中の保育室とは別の場所,集団,保育者との時間はこどもの多様な経験を担う一場面です.

(あけぼの幼稚園)

この園では,日中過ごす園舎と別棟の建物の2階を延長保育室に使っています(1階は,園庭と一体になったピロティ空間).室は段差や家具で小さなスペースに分節されており,家庭的なスケール感です.ロフトスペースも設けられ,上り天井の天窓や低い位置に設けられた窓から園庭を眺められます.高低差がこどもたちの遊びを誘発し,またこどもたちがその日の気分や遊び内容に合わせて場所や遊び仲間を選んでいます.園に長時間いると,こんな楽しい場所で遊べる.そんな気持ちをつくる環境です.