42.育ち合いの仕組み

経験や身体の大きさ,能力など「自分と違う」人との関わりを楽しみ,喜ぶ態度は,社会でのコミュニケーション能力の土台となります。こどもたちは,お互いにとって,大人とは違って自分の思いを先回りして察してくれたり,気持ちが充分に伝わらなかったりする,「思い通りにならない他者」です。さらに異年齢のこどもは,同年齢のこどもに比べて,上述したような「異なる他者」でもあります。
それでも日常的な関わりの中で,大きいこどもは小さいこどもの面倒をみたり,物事を教えたりするなかで年長者の役割を果たすことを喜びますし,小さいこどもは自分にできないことができる年上のこどもと一緒に過ごすことを楽しみます。日々の生活のなかにそのような育ち合いの仕組みがあることが,こどもたちが関わり合いを当たり前だと思う態度を育てますし,こどもたちにとって大切な環境だと言えます。

この園では,ホールをランチスペースとしても使い,異年齢が混ざり合って食事をしています。年下のこどもは年上のこどもの様子をみながらお箸の使い方を覚えたり,負けじとおかわりをしたりと,異年齢が自然に楽しく交流できる仕組みとなっています。

*園のご要望により、加工しない写真を掲載しています。

園庭での遊びでは,異年齢のこどもたちが混ざりあって遊ぶ場面がしばしば見られます。こうした遊びのなかで,遊びの文化が継承されたり,新しい遊び方が「発明」されたりしていきます。

延長保育の時間も,一般的に時間が遅くなってこどもたちが少なくなるとともに保育集団が統合されていき,必然的に異年齢のこどもたちが混在する遊びの時間となります。このような時間帯も,年少のこどもが年上のこどもの遊びを体験し,興味や関心を拡げていくきっかけとなります。年上のこどもにとっては,年下のこどもの面倒を見たり,彼らに配慮をするなかで年上の役割や振る舞い方を学ぶ機会になります。

保育集団の設定の際に,異年齢混在の保育集団をつくるケースもあります。

例えばこの園では,3〜5歳児を混合クラスとしています。このようなクラス編成では,年長らしいふるまいを意識したり,遊びの文化が継承されたりといった利点がしばしば報告されます。一方で,年長のこどもには我慢するシーンなどが増える部分もあります。この園では,年長だけで遊ぶ機会を設けるなど,気持ちを充分に発散できるようにも配慮しています。他に,年長児をたてて園内での役割意識を互いに醸成できるように,「年長児だけがいける特別な場所」を設けるなどの運営をしている園もあります。