60.安全と危険の感覚

*園のご要望により、加工しない写真を掲載しています。

「危ない」がある環境のなかでこそ,今の自分にできることとできないことを見極め,判断する能力が育つと考える園があります。

このツリーハウスは,こどもの身長に対してとても高く,園舎よりも高いところにトップの小屋があります。取りかかりの部分が安全=簡単だと,能力が不十分なこどもが思いがけず上に行ってしまう可能性があります。ここでは取りかかりの部分,登りはじめの一番下の枝までが高く,はしごなどもないため,最も難しい箇所になっています。このため,不用意にこどもが登ってしまうということがなく,一番下の枝から登れたこどもは,(高いところが怖い,などの心情面は別にして)技術や身体能力的には,上までも登れるという構造になっています。この園ではその他の遊具も,はしごや階段がなく,こどもたちの能力に合わせて遊べるように工夫されています。
こどもたちはこうした環境のなかで,「これはまだ自分にはできない」「あの遊具ができるようになったら,あっちにチャレンジする」など,自分で自分にとっての危険と安全を判断して,遊んでいます。もちろん,「あの遊具で,年長組のように遊びたい」といった,あこがれの気持ちが育つなかで,様々な遊具や遊び方に挑戦する気持ちも育っていきます。いま見える「危険」は,回避の対象であるだけでなく,いつか克服すべき挑戦の対象でもあるのです。

*園のご要望により、加工しない写真を掲載しています。

これもこどもの目線からみれば,見上げるほどに高い遊具です。下には螺旋の滑り台があり,こちらでは主に小さいこどもたちが遊んでいます。

*園のご要望により、加工しない写真を掲載しています。

見れば,遊具の頂上の小屋の屋根の上に,こどもたちが登っています。彼女たちも,「ここまでできる」という自分の判断で遊んでいます。

*園のご要望により、加工しない写真を掲載しています。

園庭に設けられた木工のスペースです。小さいこどもでも、金槌やのこぎりを使って、木片からさまざまな作品や遊びの道具をつくっています。これらが自らの想像を土台とした見立て([18.見立てを誘う環境])の対象ともなっていきます。

端から見ればはらはらする光景ですし,この園に来たばかりのこどもがすぐにこのようなことをできるわけではありません。この園では小さな頃からの遊びや,判断の積み重ね、「絶対にやってはいけないこと」と「やるべきこと」を繰り返し教えることなどの指導の積み重ねで,危険と安全を見分ける感覚を育てていくのです。