63.午睡や休憩での配慮

午睡や休憩は,こどもの心身の適切な発達や、生活リズムを整えて心身の健やかな状態を保つことにつながります。もちろんこうした状態が、情緒の安定にとっても大切になるでしょう。

午睡のために、午睡専用の室を設けることもありますが、日本ではあまり一般的ではありません。多くの園で、使わないときにはしまっておける、お布団やコット(簡易ベッド)などが使われていますが、最近ではコットを見かけることが多くなっています。お布団の場合は、布団を干したりするために園から毎週持ち帰るなどの一手間が必要になりますが、コットを園で用意する場合は、家庭で用意するものはタオルケットや掛け布団程度でよく、床に直接寝ることもないので衛生的といったメリットもあります。
午睡のほかに、こども個々人の状況に応じてちょっとした休憩がいつでもできることが大切だと考える園もあります。

トップの写真は保育室の一角に,マットがいつも置かれています。くつろいだり,ごろごろしたり,気持ちを落ち着ける場所にもなっています。

こちらでは、座りやすいソファのスペースが設けられています。家庭と同じように、くつろいで過ごすことができます。上の例でも同様ですが、園に、ファブリック(布製品)などを活用した、やわらかい・あたたかい場があることは、家庭的な雰囲気の演出や、こどもがゆったりと過ごせる場所の提供といった観点から、とても有効です。

「休憩」をもう少し広い意味でとらえてみると、静かに過ごすということでもあります。絵本を読んだり、お話をする、折り紙などの工作等静的遊びの時間としたりなど身体を休めながらゆっくり過ごすなどの場面を設けている園もあります。

こちらの園では、静かに過ごす場所を「室」として設けています。「クワイエット・ルーム」などと呼ばれます。より積極的な意味で、心を落ち着けるための場所という意味では、「カームダウン・ルーム/スペース」などと呼ばれる、小さい、落ち着ける場所を設けることもあります。しばしば、寒色系(青や緑色など)の色調を用いて、照度を落とし、絨毯やクッションなどの柔らかい素材を採用したインテリアとします。

こちらも小さな室で、静かに過ごすための部屋です。ラジカセが置かれ、リラックスできる音楽をかけたりして、場の演出を図ります。

こどもだけでなく、スタッフの休憩スペースも、心に余裕をもってこどもと接することができる心理状態をつくる、あるいはお互いの関係の構築を図り、保育について相談する場として、大切です。記録などの執務スペースとは別に設けることが、場の意味をより明確にしますが、日本ではしばしば十分に配慮されていないことがあります。

小屋裏(屋根裏のスペース)を利用して設けられたスタッフの休憩スペースです。リラックスして過ごせるソファのスペースと、保育の方針についてなどをフランクに話せるがややパブリックな意味合いをもつテーブルのスペースの両方が設けられており、場の使い分けを可能にしています。

別の園の、スタッフの休憩スペースです。ソファ、チェア、照明などで場がつくられ、とても親密な、落ち着けるスペースとなっています。
保育施設は、こどもたちのための場だというだけではなく、スタッフにとってはプロとしての労働の場でもあります。スタッフもまた、こどもと同様に大切な存在として配慮されていることが、環境づくりを通して伝えられ、共有することはとても重要なことでしょう。