37.読み聞かせの演出

読み聞かせは,こどもと親や保育者,または小さなこどもと本を読めるようになった年上のこどもが同じ時間や物語を共有する機会です。お話を聞くことに意味があるばかりでなく,時間や物語を大好きな人と共有することをこどもたちはとても喜びます。こうした意味で,読み聞かせは本の内容そのものに加えて関わりのなかで,思考力や豊かな感性や心情,関わりを喜ぶ態度を育てます。

写真は,あるこども園の3〜5歳児クラスの絵本のスペースです。いまこどもたちが興味を持つだろう本,こどもたちに読ませたい本が箱に簡単に入っています。家庭にあるのと同じサイズのソファが置かれ,スポットライトで照らされた空間になっています。ここで絵本をひらき,保育者やこどもたちどうしが身を寄せ合って,スポットライトの光のなかでお話の読み聞かせをしているとき,その場には凝縮した一体感が生まれています。照明の効果で,物語や関わりに集中できる環境がつくられていると言えます。

物語に集中できる環境は,空間の大きさでも演出することができます。身を寄せ合って座るような,囲われた小さな空間(デン)は,現実世界と切り離されてこどもたちが夢想の世界に遊ぶことを助けてくれます。

家具によっても,読み聞かせの演出をすることができます。

写真の長いす(ベンチ)は,親子が一冊の本を挟んで寄り添って座るシーンを演出するいすです。空豆のようにカーブした形状になっていて,親子が自然に寄り添えるのです。

下の写真は,大人数に読み聞かせをする,しやすい環境を建築空間でつくっている園の例です。

ここでは図書コーナーが玄関ホールに連続して設けられており,コーナーは全体に一段下がっていて,こどもたちがこのなかに入ってお話を聞いたり,縁に腰掛けてお話を聞いたりすることができます。カーブしたかたちになっていますので,直線の段に比べて視線が集まりやすく,お話に集中しやすい空間形状だと言えます。