68.地域との関係をつくる

(狭山ひかり幼稚園)

こちらの園では,玄関のゲートを背の低い(100〜120センチ),透過性の高いものとしています。以前はもっと背が高く(160センチ)向こう側がほとんど見えないものだったそうですが,このゲートに替えてから,緑豊かな園庭や,魅力的な園舎の様子,こどもたちが元気に遊ぶ様子がよく見えるようになりました。そのため,地域のお年寄りがこどもの様子を眺めていったり,野菜を分けてくださるなどの交流が生まれたそうです。

67.地域の文化と伝統に親しむ]のように,地域のお祭りへの参加などでも地域との関係をつくっていくことができますが,より日常的には,園外にお散歩に出ることなどで地域と係わる機会を自然にもっている園も多くあります。

お散歩の途中で,別の保育園のこどもとすれ違うシーンです。保育者同士だけでなく,こどもたちが自然に挨拶をしあいます。こうした体験を通してこどもたちは,「自分たち」と「他のこどもたち」が同じ街の,別の場所で過ごしていることを,暗黙知として了解していきます。
一日の大半の時間を保育所で過ごし,休日には遠出をするのでなかなか地域の公園に行くこともないというこどもも少なからずいます。こうしたこどもたちにとって,日常的なコミュニティ(自分の保育所の保育集団)以外のこどもたちに触れる機会は思いのほか少ないことがあります。いずれ小学校に入ったときに,異なる来歴をもつこどもたちと一緒に過ごすことになりますが,そうした際に,世界には自分たち以外に複数の集団があるのだということを体感的に理解していることは大切な予備経験となります。

お散歩の途中で,地域の人とご挨拶をします。地域のお年寄りなどとの交流は,核家族化が進んだ昨今ではこどもたちにとって「おじいさん,おばあさん」との貴重な関わりの機会である場合も多くあります。

保育者が,こどもたちが公園で遊び始める前に,公園の様子を見て,危険なものやゴミが落ちていないかを確認し,危ないものがあれば拾って片付けます。
保育の場としてまちの公園などを利用することが,地域の環境保全や子育て環境としての安全や質を守ることにも役立っているのです。また,近年では少子化や共働きの世帯が増えたことで,日中のまちでこどもたちの姿を見かけることが以前よりも少なくなっています。保育の場として保育所等がまちの資源を利用することで,まちにこどもたちが還ってきます。これは,地域全体でこどもたちを守り,育てるという意識の醸成につながっていくでしょう。

ほかに,地域との関係を育てることにつながる取り組みとして,園庭の地域開放や,オープンなバザーをするなどの例があります。