6.「触」覚のある環境

*園のご要望により、加工しない写真を掲載しています。

触覚は,皮膚の感覚であると同時に,身体を動かしたときの環境の応答や,風などの環境の動き,つまり身体と環境の関係を身体全体で感じる感覚でもあります。触覚がない状況を想像してみてください。衣服などで身体が守られていること,大切に抱きしめられていること,しっかりと大地に立っていること,椅子が身体を支えてくれていること,こうした感覚の全てがない状況です。動物である限り,人間はそのような状況にはとても耐えられないでしょう。触覚は,生き物が「ここ」にいることを体感する最も基本的な感覚です。[4.くつろいだ雰囲気]や[5.延長保育スペースでの配慮]のように,ファブリック(布系の素材)を採り入れると,環境にあたたかさや柔らかさを演出できます。

多様な「触」感覚は,足元からも得られます.例えばこの園では,敷地境界と園舎の隙間のちょっとした空間に,いろいろな舗装を施しています。ほんのちょっとしたスペースを活用して,こどもたちが,砂利を歩くときのざくざく,ウッドタイルのコツコツ,飛び石のカンカン,などのさまざまな感覚を楽しめる環境となっています.

この園では,園庭の小石を丁寧に取り除き,裸足で過ごせる環境をつくっています.日陰の土のひんやりと吸い付くような感覚や,日向の土のちりちりとした熱さを楽しむなかで,自然のあたたかさやおおらかさ,ときには厳しさを身体で理解することができるでしょう.こうした体験が,科学への関心や理解の根幹をつくっていきます。
室内でも,畳や絨毯,フローリング,タイルなど足もとの感触が異なると,寝転がったり,身体を動かしてみたり,こどもの活動が違ってきます.足もとから多様な場所を用意することで,それぞれの場所性やそこでの過ごし方の違いを演出できます.