58.立体的な空間の体験

*園のご要望により、加工しない写真を掲載しています。

立体的な空間とは,たとえば吹き抜けや中二階,ロフト,視野が拡がる階段などがあって,空間が2層・3層になっている空間,それが感じられる空間を指します。保育施設やご家庭では,平面的な拡がりはあっても,立体的な空間を体験しにくいことが少なくありません。
園庭などの屋外空間では,ジャングルジムや滑り台など高さのある遊具が置かれていることが多いのですが,屋内空間,つまり一定の制限のある空間(大きさが限定された空間)のなかで立体的な空間を体験できると,三次元の「空間」というものを理解するきっかけとなりやすいと言えます。例えば園庭で,ジャングルジムに登って周囲を見回しても,その向こう側の境界が茫漠としているので,「空間」は把握しにくいのです。
三次元立体としての空間を体験することは,空間と自分の身体を把握しすることにつながります。また立体的な空間では,全身を使って移動したり遊んだりすることができるので,身体づくりにもつながります。

天井高の高い保育室に,立体の遊具を置いています。遊具はご覧の通り下から登る「階段」はなく,はしごを使って登ります。室内でも身体を使って遊べます。3段になった遊具の空間はそれぞれこどもたちの遊び場所になっており,例えば2段目には,ままごと遊びのスペースが作り込まれています。

この園では,屋根の傾斜を利用して保育室にロフトが設けられています。ロフトは隣り合う保育室をつないでいて,保育室の裏側(園庭と反対側)の廊下と合わせて,立体的な回遊性のある空間となっています。

こどもたちは,棒や段差,階段を使って保育室の中でも身体いっぱいで遊んでいます。

ホールに連続した大階段がある園です。この大階段は,イベントの際の座席として使われたり,日常的にもこどもたちの遊び場所になっています。

周囲に開かれた,ゆったりとした階段は,こどもの遊びや滞在の場所にもなります。立体的な空間を使って遊ぶ体験は,こどもたちの“場所を見つける力”も育てます([51.アフォーダンスの演出]も参照してください)。

都心の,保育施設としては狭小な敷地に建てられた保育施設の内部空間です。1フロアごとがあまり大きくないことを活かして,フロアごとに「室」として区切らない,年齢ごとの保育スペースとしており,2階フロアに0・1歳児保育室,中三階に2歳保育室,3階フロアに3〜5歳児の保育室をとっています。その2階〜中3階〜3階とつながるスキップフロア状の階段空間は,保育室と区切られることなく,こどもたちの遊び場所となっています。

屋外空間でも,立体空間として作り込まれた遊具などで,空間を感じることができる事例もあります。

*園のご要望により、加工しない写真を掲載しています。

この園では,園庭を囲むように大きな,一体的な遊具を建築的なスケールで作り込んでいます(遊具というよりも,建物のように作り込まれています)。この遊具のデッキの下にある大小の空間のなかで,こどもたちは半屋外の空間のように場を見つけて,遊んでいます。