55.遊びの場の保障
こどもたちに遊び内容に応じた「場」を保障することは,[53.遊びの保存]と同様に,いつでもその遊びに戻れるという安心感を与えます。こうした安心感があることで,遊びを中断して生活の時間をとるなどの活動の移行もスムーズに行うことができます。「明日また遊ぼう」などの,園での生活や遊び,気持ちや人間関係の継続性や,見通しをもつことにもつながります。こうしたことは情緒の安定につながります。また連続する時間や日々のなかに自分の遊びを位置づけられることで,ゆったりとした気分のなかで感性や心情を深めることもできるでしょう。
遊びの場の保障には,[52.遊びの可視化]などとともに,空間をそれぞれの遊びの内容に即して分割すること(ゾーニング)が有効です。
保育室のなかに,棚やテーブルなどの家具で,遊びの場所と生活の場所を分けています。テーブルは,食事や集まりのための場所として位置づけられていて,自由遊びの時間には机遊びの場所にもなります。
写真は,食事が終わったこどもから,めいめい自由に遊びに戻っていっている場面です。遊びの場所と生活の場所が連続して,それぞれに設けられていることで,こどもがそれぞれのペースで食事をすることができています。同様に,午睡をする年齢やプログラムの園/保育スペースでは,午睡と食事,遊びの場所が別に確保されていると,それぞれのペースを守りながら,場面の切り替えがスムーズに行えます。
保育室の一角に,工作や絵画などの制作遊びのためのスペースが確保され,関連する道具などが置かれています。写真の右側手前には流しがあり,このゾーンだけでさまざまな制作遊びができるようになっています。ここは,アトリエスペースと呼ばれています。空間に名前がついていることは,こどもや保育者にその存在や意味を認識させ,共有することができるための,重要な手がかりになります。
このようなスペースはさらに外部のテラスに連続しているなどの建築的な配慮があれば,つくったもので遊んだり,テラスで大きな作業をしたりといったさらに発展的な遊びも期待できるでしょう。建築空間と,建築内部のインテリアや設えといった,レベルの異なる環境が一体的につくられていることが,豊かで魅力的な環境をつくりだします。
園の方針や対象とする年齢などによっては,保育室を,家具などで視覚的にはあまり区切りたくないという場合があります。そうした場合に遊びの内容に即して空間の一部を意味づけ,遊びの場を保障するためには,床材の変化が有効です。たとえは,畳やロールカーペット,コルクタイルなどの床素材を使うと,その場所が他と違う場所だという印象を与えることができます。