31.自国の文化を知り,親しむ
※施設は重要文化財に指定されています。
(大阪市立愛珠幼稚園)
自国の文化を知り,親しむことは母国やその歴史への愛着を育み,自己肯定感や国や郷土を愛する気持ちを育てます。それは,アイデンティティの一部として自国を客観的に語る視点や能力に結びついていきます。このような視点は,国際化の進む今日であればこそ必要とされる姿勢や能力のひとつと言えます。外国の方に母国の文化について問われたときに,文化史や伝統文化,メンタリティなどを語れることは,外国の方との適切な関係づくりや互いの文化を理解し尊重する上でとても大切です。
※施設は重要文化財に指定されています。
(大阪市立愛珠幼稚園)
写真は,明治時代の園舎を,メンテナンスしながら使い続けているある園の廊下空間です。いかにも和風の空間で,厳かさと落ち着きが渾然一体となった雰囲気をもっています。このような空間はいまはご家庭でも珍しいでしょうから,ここでの生活はこどもにとっては非常に貴重な体験となるでしょう。
日本文化をこどもたちに伝えるために,和室を園に設ける園も少なからずあります。この写真の和室は本格的なもので,床の間にはいつも季節の掛け軸と花が飾られ,床の間本来のたたずまいを演出しています。部屋から続く縁側の向こうには小さいながら見事な日本庭園が見えます。この和室をつかって,年長児を中心にお茶を教えることもあるそうです。
このような和の空間性を体験することもこどもにはとても大切な経験となるでしょう。
和室を設けるまでのことでなくとも,遊びのゾーンのひとつには畳を敷いてみるといった工夫だけでも,フローリングや絨毯とは異なる空間性を味わうことができます。
この園では玄関ホールの窓の外に,小さな坪庭をつくってそこを和の空間としています。この園には地域柄,多国籍のこどもたちが通園しているのですが,そうしたこどもたちのご家庭にも協力いただいてそれぞれの国の文化を紹介していただくと同時に日本の文化や精神性を伝えることで,互いの文化への理解や敬意の醸成を促しています。
写真は,和風の飾り物が玄関ホールにさりげなくかけられている様子です。
季節の行事([20.季節を感じ,楽しむ])や絵画,ひな人形等の掲示物やオブジェ([12.日常的に美に触れる])などでも,伝統文化を伝えたり,それを大切にする姿勢を養うことはできるでしょう。