26.「自分で」を支える
なんでもやってもらっていたこどもがやがて,「自分で,自分で」と主張し始めます。自分も一個の人間として尊重されたいという思い,もちろん好奇心もあるでしょう。そうした「自分で」という思いを引き出し,守ることで,こどもの自主性や自立と自律を支えることができます。自分でできる,という思いは自信や自己肯定感につながり,情緒の安定ももたらします。自立的に動くことができることで行動範囲が拡がるとともに,自信を持って身体を動かせ,健康な身体づくりにもつながるでしょう。
写真は1歳児クラスの保育室での家具の工夫の例です。それぞれのこどもが使う椅子に,クッションや手作りの足置き台がセットされ,こどもが自分で姿勢良く,かつ楽に座れるように配慮されています。足置き台には足裏のイラストが画用紙で貼られており,「ここに足をおく」ことがこどもにわかりやすく,意識されるようにデザインされています。
この園では,椅子の座面と足裏までの長さ(下腿高)を椅子に合わせるために浴室用のクッションマットを切ってボードをつくり,その枚数で高さを自由に調整できるように用意しています。また,テーブルと身体の関係を適切にする(椅子に座ったときに肘がテーブルの上にくると上手に食べられる)ために,椅子の座面と背もたれにマットをカバーに入れてあてています。この椅子はスタック(重ねて置いておくこと)ができるので,使っていないときは部屋の隅などに場所を取らずに保管することができます。
もともと座面と足置き台の高さを自由に調整できる家具を入れるケースもあります。この写真は北欧の保育所の例で,「家庭らしさ」を大切にすると,家庭にあるのはこどもサイズのテーブルではなく大人サイズのテーブルで,こどもが家具などで適切な配慮をしてもらって大人と同じテーブルに着くことが自然だから,という理由で,このような大人サイズのテーブルと,それに合わせてこどもが座れる椅子を選択しています。
丸い絨毯が保育室の中央に敷かれています。クラス全員が「集まる」場面では,この絨毯の上に座って,保育士の話を聞くことになっています。丸い絨毯は集まる場面でのエリアの目印になっています。床にビニール・テープで集まりの目印を示している園もありますが,テープはいずれ端がめくれてゴミが付着し見た目にも汚いですし不衛生になることがあります。また「生活の場所」という雰囲気を阻害しますので,その場所やその場所につくりたい雰囲気に相応しい方法を選ぶことや定期的なメンテナンスが必要です。