25.流れをデザインする
こどもたちの自主性や自立と自律を促すため,朝夕の荷物の準備や片付けをこどもたち自身がやるように促している園が多くあります。ご家庭でも,自分でできることが増えるように支援していらっしゃるでしょう。
こどもたちに複数の行動や動作を指示する際には,「一連の行動」として,流れをつくって指示することがこどもたちの理解や記憶を助けます。状況に応じてケースバイケースで,といったランダムな指示ではこどもが戸惑ってしまったり,途中で他のことに気を取られてしまったりといったことがよくあるのはご承知の通りです。
例えば4〜5歳児くらいの保育所での朝の準備の流れを考えてみると,下記のようなものでしょうか。
1) 靴を脱いで,しまって
2) 靴下を脱いで,しまって
3) 帽子や上着を脱いで帽子かけと上着掛けにかけ て
4) レッスンバッグから手ふきタオルを出して所定 の場所にかけて
5) レッスンバッグから着替えを出して持ち物棚に しまい
6) レッスンバッグから連絡ノートを出して所定の 場所に置き
7) 最後にレッスンバッグを所定の場所に置く
これだけのことを,ランダムに指示されたら大人だって混乱しそうです。もちろんこれは一例なのでそれぞれの園やご家庭の状況に合わせて,こどもの目線またはこどもをサポートする親の目線に立って,どこで・なにをするかがスムーズに流れていくように家具や収納場所の配置などを工夫すると,こどもが自分のことをやりたい,できると思う気持ちをもてるように支援できます。また実際に,準備がスムーズにできるようになります。
「一連の行動」は,言葉がけやイラスト掲示などによってこどもに明確に伝えるとより効果的です。また保護者や保育者がこの流れを共有して,こどもがいつでも同じ順で整えられるように一貫した指示ができる環境をつくることとさらにこどもが理解し,記憶しやすくなります。もちろん,こどもが充分に慣れて内容に習熟すれば,自分なりの順番で動けるようにもなるでしょう。
こちらの園では,こどもの目線に「あさのしたく」の流れを掲示しています。流れは空間と連動して,保育室に入って順番に(戻りや行ったり来たりがないように)組み立てられています。動線の混乱がないことは,こどもたちが準備中にぶつかってしまったりなどの事故を防ぐ効果もあります。
他に,午前中の遊びのあと,片付けをして昼食,着替えて歯を磨いて絵本を読んでお昼寝,など生活の流れをあるルールに載せると,こどもが先を見越して動くことができ,自主性の獲得や情緒の安定を支援することができます。