9.においによる豊かな体験

さまざまな感覚のうち,「におい」は特に記憶と結びつきやすいと言われています。「おばあちゃんのうちのにおい」「雨上がりのにおい」「お母さんのお化粧のにおい」「たき火のにおい」「おっかなびっくり擦ったマッチのにおい」など,それぞれに印象深いにおいと,それに結びついた場面やもの,懐かしい記憶があるのではないでしょうか。

においと結びついた多様な経験は,後に振り返ったときの記憶をみずみずしく,豊かな体験として彩ってくれるでしょう。もちろん日々の生活のなかでも,こどもたちの感性を豊かに育て,創造力を刺激したり,情緒の安定にもつなげることができます。

都市部での生活のなかでは,嗅覚が鈍麻してしまったり,気持ちの良いにおいが少ないと言うことがあるかもしれません。しかし,食べ物や草木,枯れ葉や生き物,土や雨のにおいなど,本当はたくさんのにおいが身の回りにあります。

保育や子育ての中で,「良いにおいだね」「特徴のあるにおいだね」など意識して声かけをしたり,体験を共有することが,においに対する気づきと感覚を育てていきます。