❖環境をつくること

保育所保育指針や幼稚園教育要領ではこどもたち自身の意欲を伸ばし自ら育つ力を引き出す観点から,保育者が環境を通して間接的に保育する「環境による保育」が謳われています.またこれらの指針と要領では障碍のあるこどもたちへの,障碍の種別や程度に応じた配慮も謳われており,環境のあり方が、障碍や発達の特性のあるこどもの成長・発達や心地よく日々を過ごし楽しむことを支援できることも示唆されています。環境をつくることは,こどもたちにこう育ってほしい,このように日々を楽しんで欲しい、こどもたちの育ちをこのように支援したいという想いをかたちにすることだと言えます.

環境づくりの価値観は多様であってしかるべきでしょう.単純に良い環境,悪い環境ということではなく,理念や目的をもって,その理念や目的を実現するためにこういう環境づくりをしよう,という構造が明確に意識されていることが一番,大切なことだと思います。

例えば保育所や幼稚園では、窓にセロハンテープで貼られた「くまさん」や「うさぎさん」などの紙細工をよく見かけます。なぜ,茶色のくまやピンクのうさぎを“そのデザインで”,“紙細工をつくって飾る”のですか? なぜ,“セロハンテープで”“窓に直接貼る”のですか? “なんとなく”や,“みんながやっているから”,“型紙があって簡単だから”,ではなく,保育者自身が自身の保育にかける矜持や園の保育理念に添ったねらいをもち,そのためにその飾り付けを,そのように,しているのでしょうか。こうした問いに,自信をもって「こうだから」と答えられるときに初めて,それがその園の理念に即した保育の空間である、という現れと、理解できます。