60.安全と危険の感覚

保育や療育の場では基本的に危険がないように配慮された計画がなされます。例えば,段差はなくし,高所からの思わぬ落下事故がないように柵を設けるなどの配慮は建物を建てる段階で,基本的な事項として行われています。ほかにも,私たちの生活の中での身近な危険として戸に手を挟んだり,指を挟んだりしてしまうことがあります。写真の園では扉に戸当て,トイレに戸に指ハサミ防止用のシートを設けて,こどもたちがケガをしないようにしています。こうした物理的配慮による危険の排除は,施設を利用するご家庭の保護者に対して,身近な環境での危険な箇所や,それに対する配慮を学ぶ教材としても有効です。

窓やドアの開閉を小さなこどもが不用意にしてしまい,挟まれる・他のこどもを挟む,上層階の窓から落下するなどの事故につながらないよう,鍵を高いところに設けたりする事例もあります。一方で,部屋に出入りする扉に鍵をかけることでこどもの自由を奪うことはおかしい,こどもがその場から出ていきたいことがあるとすれば,設定や指導に課題があることを示唆していると捉えるべきだ,という考え方です。また,重大事故につながらないレベルでの「危ない」がある程度ある環境のなかでこそ,危険への意識や感覚が養われて,何が安全で何が危険かをこどもたち自身が判断し,他の環境にも適応していくことができる能力が育つと考える園があります。例えば高所の危険と自分の身体能力のバランスを理解するために,巧技台などで高所での運動体験を日々の活動に取り込むなどが挙げられます(関連:(58)立体的な空間の体験)。こどもの年齢や障がい特性・発達に応じて環境を整えていくことが必要です。