33.電子メディアとの適切な距離感

いま,多くのこどもたちを取り巻く環境のなかには,テレビやビデオ,パソコン,インターネット,ゲーム,iPadなどの電子媒体や電子機器が日常的に存在しています。こうした媒体や機器を含むメディアは,こどもの成長・発達,特に心身や創造性の発達に悪影響をもたらすとされることもままあります。しかし冷静に考えれば,例えば身体を動かす機会が少なくなったとして,その理由はメディアではなくメディアの使い方や,メディアとのつきあい方にあるはずです。

テレビやビデオ,デジタル図鑑など,こどもの創造性や興味関心を適切に刺激できるさまざまなコンテンツが多様に開発されており,一概に「悪いもの」とは言えなくなっています。従来の紙ベースの絵本や図鑑がこどもたちのペースで見ていけるメディアであること,読み聞かせはその時間を本を読む大人や年長のこどもと,聞くこどもが共有することで関わりを育てられること,情報がある程度制限されているからこそ絵本が「行間」を読む能力の発達を刺激することなどのメリットは疑いようがありません。しかし電子メディアには,動きや音声,メロディと連動した一体的な情報が得られるなどの,また異なるメリットがあります。一例を挙げれば,ハチドリの羽ばたきや補食行動,求愛のダンスと歌を,本だけで理解することは難しいでしょう。また,訓練ツールや意思疎通の補助ツールとしてタブレット型情報端末などのデジタルデバイスを利用したシステムが開発されていたりもします(写真は補助ツールアプリの例「Drop Talk」)。

一般的には,テレビ番組やビデオ鑑賞などの際には,こどもだけで見せるのではなく,親子で一緒に見ながら,番組などの内容を話題にいろいろな話をしたり,登場人物などの言葉や行動に解説が必要と思われる場面で適宜コメントをはさんだりなどの関わり方が推奨されています。年齢や,成長・発達のねらいに即した内容や利用方法を考え,適切な距離感を保ちながら電子メディアも有効に活用していきたいものです。