22.時間の可視化
時間の感覚を身につけることは,こどもたちの自立と自律を促す観点からとても大切なことです。また,一日の予定の活動に即してスケジュールが流れることで,安心してそのときそのときの行動に取り組めるこどももいます。そのためには,時間が「目に見える」こと,時間が過ぎていく様子やある時刻が迫っていることがわかる環境づくりが有効です。
多くの園やご家庭で,時計を壁にかけたり,置き時計を置いていらっしゃいます。こどもが時間を認識するには,デジタル時計よりも,アナログの方がわかりやすいようです。こどもたちがまず読めるようになるアラビア数字とデジタル数字の表示形状が異なるので,デジタル数字は同じ数字といっても文字の認識それ自体として,難しいこどもがいます。発達障がいの人のなかには,デジタル時計では時間の計算ができない(難しい)人がいます。こういった場合には,アナログ時計でも,時針の形(針の関係)で時間がわかるこどもが多くありません。このため,アナログ時計のなかでも,アラビア数字で時刻が大きく・はっきり・わかりやすく書かれているデザインの時計が最も「時間を見る」のに向いています。
一方で,デジタル時計ならば“長針が「2」を指しているときが10分”といった時計の読み方ならではの特殊なルールがないために時間の認識(数字の把握)がしやすいが,時間の計算が難しい,という人もいます。60進法という時間ならではの算数的繰り上げ・繰り下げが難しいのです。
時間の見せ方・伝え方として,①活動や状況の転換時刻をあらかじめ伝える,「○時になったら,何をする」と,②活動の転換のために,身仕舞いや心の準備が必要であってそれまでの時間を示すときには「あと○分」を伝える(計算が必要ないようにする),という,使い分けまたは併用が効果的です。
写真は,活動の終了時刻が一目でわかるように,時計に印をつけている園の例です。「あと○分」という時間を環境を通して伝える場合には,カウントダウン・タイマーなどを用いることができます。
また,時間帯の認識を助けるために,休み時間には決まった音楽を流す,などの聴覚的なサポートを一緒に行う[㉔音で場面や行為を知る]例もあります。
*LD(学習障がい)のうち,一般的に識字/読み書きの障がいとされる「ディスレクシア」について,「時間感覚の障がい(脳の時間知覚機能の障がい)」との関連を指摘する研究者もいます。時間感覚(時計を読んで・時間を知り・行動する,予測する,集中のon/offをする)について困難があるこどもの場合,さらにもっと細かい時間での情報処理・連続認知タイミング
参考:
クラウディア・ハモンド(著),渡会圭子(翻訳):脳の中の時間旅行 –なぜ時間はワープするのか,インターシフト,2014.3.25