身近に動植物がいない環境ではこどもが成長過程で命を実感として理解できず,それがために近年のこどもが他者を傷つけたり,他者に愛情をもてないという問題が生じているのではないかという言説を目に耳にするようになって久しいかと思います。
 身近に動植物がいないから・他者の痛みを分かち合えないこどもになるとは思いませんが,命を感じ,命に親しむことはこどもたちの感性や心情を豊かにしますし,生き物の世話などを通して命に責任を持つことを学ぶこともできるでしょう。


*園のご要望により、加工しない写真を掲載しています。

写真の園では,園庭で鶏やウサギ,ヤギ,犬,鳥を飼っています。犬と鶏は放し飼いにされていて,園庭でめいめい過ごしています。こどもたちがかわるがわる犬と一緒に遊んでいる様子が見られます。

この園では園庭の一端が山裾に接しており,こどもたちが草むらを探して虫取りをしています。生き物がいつも身近にいる環境で育ったこどもたちの多くは,バッタ,コオロギなどを触ったり,捕まえたりすることを怖がりません。こうした環境のなかで,こどもたちは生き物が生き物を食べるということも実体験として知り,理解します。やがては自分たちも同じ環の中に生きていることを理解し,自分たちの食卓にのぼるものへの感謝や畏怖の念も感じるようになるでしょう。

こどもたちが,ケースのカブトムシをじっと見つめています。このカブトムシは,こどもたちが保護者らと一緒に卵から育てた個体で,彼らは羽化したときから毎日朝昼晩とケースが目に入る度に飽きもせずに眺めています。やがてカブトムシには一匹また一匹と寿命が来て,動かなくなります。5歳のこどもは,動かなくなったカブトムシを見てつぶやきました。
「どうしてカブトムシは,みんな“いのちの時間”が違うのかな?」
「カブトムシは,アナグマさんと同じ,長い長いトンネルの向こうに行ったんでしょ?」
 これらはそれぞれ,命や生と死について描かれた絵本『いのちの時間』(*)と『わすれられないおくりもの』(**)にあるフレーズがもとになったつぶやきです。
 こどもが生き物とのふれあいを通して命や生と死を感じ,それを既知の物語や言葉と結びつけて理解していっていることがわかるエピソードです([16.物語が編み込まれた環境],[36.知識や物語の泉に触れる])。

*ブライアン・メロニー著,ロバート・イングペン画,藤井あけみ訳『いのちの時間 −いのちの大切さをわかちあうために』,新教出版社,1998
**スーザン・バーレイ著,小川仁央訳『わすれらないおくりもの』,評論社,1986

情緒の安定
1.登園時の期待感
2.気持ちの切り替え空間
3.小さな居場所
4.くつろいだ雰囲気
5.延長保育スペースでの配慮
豊かな感性
6.「触」覚のある環境
7.遊びのなかの触覚
8.全身で感じる遊び
9.においの体験
10.風と気づき
11.光の体験
12.日常的に美に触れる
豊かな心情
13.「演じ」て理解する
14.表現する−音楽
15.表現する−絵画,造形
自然と生命への
畏敬と愛情
 
19.自然に親しむ
20.季節を感じ,楽しむ
21.命を感じ,親しむ
 
創造性の芽生え
13.「演じ」て理解する
14.表現する−音楽
15.表現する−絵画,造形
16.物語が編み込まれた環境
17.遊び込める仕掛け
18.見立てを誘う環境
豊かな言葉
35.文字や数字がある環境
36.知識や物語の泉に触れる
37.読み聞かせの演出
38.ショウ&テルの機会
思考力
30.伝統文化を遊ぶ
31.自国の文化を知り,親しむ
32.多様性を体感する
33.電子メディアとの適切な距離感
34.「不思議」,科学の目の芽生え
自主性・主体性・意欲
50.「基地」空間
51.アフォーダンスの演出
52.遊びの可視化
53.遊びの保存
54.片付けのための工夫
55.遊びの場の保障
56.集中して遊べる空間
自立と自律
22.時間の可視化
23.日課の可視化
24.音で場面や行為を知る
25.流れをデザインする
26.「自分で」を支える
27.着脱の自立への配慮
28.排泄の自立への配慮
29.身近な手洗い場
 
関わる
喜んで話したり
聞いたりする態度
 
38.ショウ&テルの機会
39.仲間の共有
40.保育単位の連携と柔軟性
41.交流の拡がりを誘う空間
42.育ち合いの仕組み
人に対する愛情と信頼感
42.育ち合いの仕組み
46.命の祝福
47.自己の成長の確認
48.生活の振り返りの機会
49.作品の展示
他者大切にする心
協調性
 
43.協働の達成感と喜び
44.集団活動の機会
45.集団のなかでの個の尊重
 
空間把握と身体の把握
57.拡がりのある空間の体験
58.立体的な空間の体験
59.俯瞰する体験
60.安全と危険の感覚
しなやかで健康な身体
61.日常的に身体を動かせる
乳児の環境
62.全身を使って遊べる幼児の環境
63.午睡や休憩での配慮
食への興味と関心
64.調理との関わり
65.食べ物を知る
66.食べ物を育てる体験
 
家庭地域との連携
67.地域の文化と伝統に親しむ
68.地域との関係をつくる
69.保育の時間の共有
70.保護者とつくる環境
71.保護者の活動支援
72.保護者同士の関係をつくる