*この写真は許可を得て、加工しない写真を掲載しています。

自然のなかには,「不思議」や「あこがれ」「恐怖」「美しさ」などのこどもや大人の心を動かす要素がたくさんあります。自然に親しむことで,自然と生命への畏怖と愛情が育ちます。また,感動や情動,不思議の体験を通して創造性や思考力,豊かな感性も育まれるでしょう。

写真は,タンポポの綿毛を不思議そうに見つめるこどもです。レイチェル・カーソンは著書『センス・オブ・ワンダー(神秘さや不思議さに目を見はる感性)』のなかで“・・生まれつきそなわっている子どもの「センス・オブ・ワンダー」をいつも新鮮にたもちつづけるためには,わたしたちが住んでいる世界のよろこび,感激,神秘などを子どもと一緒に再発見し,感動を分かち合ってくれる大人が,すくなくともひとり,そばにいる必要があります。”と書いています(*)。
こどもの興味や好奇心が動いているときに,あるいは動くように,保育者や保護者が一緒に楽しみながら,さまざまな知識を伝えたり,物語の語りかけをしたいものです。タンポポの綿毛がなぜあるのかや,タンポポの花の茎は花が咲いているうちは低く,綿毛をつける頃にすっくと伸びることなどは大人が考えても,面白いことではないでしょうか(**)。
しかし,レイチェル・カーソンは先述のくだりに続けて,こうも書いています。“もし,あなた自身は自然への知識をほんのすこししかもっていないと感じていたとしても,おやとして,たくさんのことを子どもにしてやることができます”。“「知る」ことは「感じる」ことの半分も重要ではない”,そして“美しいものを美しいと感じる感覚,新しいものや未知なものにふれたときの感激,思いやり,憐れみ,賞賛や愛情などのさまざまな形の感情”がしっかりとした知識に結びついていくのだ,と。知識よりも,こどもと一緒に「感じる」ことができることのほうが,ずっと大切だと彼女は言っています(*)。自然の中には,そのように感性を開かせる要素がたくさんあります。


*園のご要望により、加工しない写真を掲載しています。

写真は,園庭から保育室に登る階段の横に,こどもが1人ひとり育てているチューリップが置かれている様子です。日常的に目にしないかもしれない「花壇」に置くのではなく,毎日何度も上り下りする動線に置かれていることで,自然と成長や変化の様子が目に入ります。自然への親しみを覚えやすい仕掛けといえます。

園庭や動線空間に充分な空間がない場合でも,ベランダや屋上を活用するなどの方法で,保育場所やご自宅で自然に親しむ環境をつくることもできます。写真は,保育室から出られるベランダで野菜をプランター栽培している園の様子です。

園庭に林や森のような空間がある,近隣に自由に散策できる林があるなど,日常的に自然に触れる機会のある環境はもちろんすばらしいでしょう。そこには探検ごっこや,草や木の実などを集めてそれらでままごとをしたりなど,こどもの遊びを誘発する要素がたくさんあるでしょう。
 採取した自然の一部,例えば小枝や草,葉,木の実や貝殻などを使って遊んだり,作品をつくったりすることも,こどもたちが自然に親しみ,自然への畏怖や愛情をもつことを助けます。

海への遠足保育の際に,思い出と作品づくりの素材として集められた貝殻が,保育材料の保管場所兼スタッフの打ち合わせ場所に置かれています。こうした素材をこどもや保育者の目に入る場所に置いてあることも,創作意欲や自然の美しさへの気づきを誘うでしょう。

こどもたちが公園で拾った松ぼっくりや小枝,どんぐりなどを使ってつくった作品を展示しているところです。

* レイチェル・カーソン(上遠恵子訳)『センス・オブ・ ワンダー』,新潮社版,1996.07(46刷2006.09)

** 余談ですが,筆者は「ドラえもん」の単行本18巻の巻末の一話「タンポポ空を行く」が大好きです。さまざまな物語を自分のなかに持つことで,なにかを見たときに思い出すことがらがネットワークのように拡がります。物語は,世界を見る目を豊かにします。

情緒の安定
1.登園時の期待感
2.気持ちの切り替え空間
3.小さな居場所
4.くつろいだ雰囲気
5.延長保育スペースでの配慮
豊かな感性
6.「触」覚のある環境
7.遊びのなかの触覚
8.全身で感じる遊び
9.においの体験
10.風と気づき
11.光の体験
12.日常的に美に触れる
豊かな心情
13.「演じ」て理解する
14.表現する−音楽
15.表現する−絵画,造形
自然と生命への
畏敬と愛情
 
19.自然に親しむ
20.季節を感じ,楽しむ
21.命を感じ,親しむ
 
創造性の芽生え
13.「演じ」て理解する
14.表現する−音楽
15.表現する−絵画,造形
16.物語が編み込まれた環境
17.遊び込める仕掛け
18.見立てを誘う環境
豊かな言葉
35.文字や数字がある環境
36.知識や物語の泉に触れる
37.読み聞かせの演出
38.ショウ&テルの機会
思考力
30.伝統文化を遊ぶ
31.自国の文化を知り,親しむ
32.多様性を体感する
33.電子メディアとの適切な距離感
34.「不思議」,科学の目の芽生え
自主性・主体性・意欲
50.「基地」空間
51.アフォーダンスの演出
52.遊びの可視化
53.遊びの保存
54.片付けのための工夫
55.遊びの場の保障
56.集中して遊べる空間
自立と自律
22.時間の可視化
23.日課の可視化
24.音で場面や行為を知る
25.流れをデザインする
26.「自分で」を支える
27.着脱の自立への配慮
28.排泄の自立への配慮
29.身近な手洗い場
 
関わる
喜んで話したり
聞いたりする態度
 
38.ショウ&テルの機会
39.仲間の共有
40.保育単位の連携と柔軟性
41.交流の拡がりを誘う空間
42.育ち合いの仕組み
人に対する愛情と信頼感
42.育ち合いの仕組み
46.命の祝福
47.自己の成長の確認
48.生活の振り返りの機会
49.作品の展示
他者大切にする心
協調性
 
43.協働の達成感と喜び
44.集団活動の機会
45.集団のなかでの個の尊重
 
空間把握と身体の把握
57.拡がりのある空間の体験
58.立体的な空間の体験
59.俯瞰する体験
60.安全と危険の感覚
しなやかで健康な身体
61.日常的に身体を動かせる
乳児の環境
62.全身を使って遊べる幼児の環境
63.午睡や休憩での配慮
食への興味と関心
64.調理との関わり
65.食べ物を知る
66.食べ物を育てる体験
 
家庭地域との連携
67.地域の文化と伝統に親しむ
68.地域との関係をつくる
69.保育の時間の共有
70.保護者とつくる環境
71.保護者の活動支援
72.保護者同士の関係をつくる